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経済
FRB、量的緩和縮小 「道のりまだ長い」
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米連邦準備制度理事会(FRB)は12月18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、米国債などを大量に購入する量的金融緩和策について、来年1月から購入額を毎月850億ドル(約8兆7500億円)から750億ドルに縮小することを賛成多数で決めた。雇用など米景気の改善を受け、小幅な緩和縮小が可能と判断した。FRBは異例の金融緩和策から「出口」へと踏み出した。
FRBはFOMC後に発表した声明で、最近の堅調な経済指標に触れ、「景気は緩やかに拡大を続け、労働市場は一段の改善を示している」と指摘した。
FRBは金融危機で落ち込んだ米景気の回復を後押しするため、450億ドルの米国債と400億ドルの住宅ローン担保証券(MBS)を毎月購入してきたが、それぞれ50億ドル減額する。
その後も雇用が改善し、物価上昇率が目標の2%に近づけば一段と資産購入を減らす方針。ベン・バーナンキ議長(60)は記者会見で「慎重に縮小を続ける。2014年終盤までかかるだろう」と述べ、14年末に資産購入を終える見通しを示した。
一方、失業率が6.5%を上回り物価上昇率の見通しが2.5%を下回る限り、事実上のゼロ金利政策は続ける方針を維持した。
「米経済の進展が本日の決定に反映された。数四半期にわたり成長もいくぶん加速するだろう」。バーナンキ議長は記者会見の席上、景気回復への手応えを強調した。
金融危機で10%に跳ね上がった失業率は7%に下がり、雇用とともに米経済の体温計とされる住宅市場も底を打った。消費や企業業績も底堅い。FRBが景気を支えるため続けてきた量的緩和の手綱を緩めたのは、自律的回復が軌道に乗ってきた裏返しでもある。
議会与野党の財政協議が今月(12月)決着し、年明けの政府機関閉鎖が回避されたことも大きい。米JPモルガン・チェースのエコノミスト、ジョセフ・ラプトン氏は「指標の改善と財政協議の進展がFRBの背中を押した」と指摘する。
資産を買い入れ市場にドルを流し込む量的緩和はインフレ懸念など副作用もある。中央銀行本来の政策は金利の上げ下げで景気を刺激したり冷ますもの。量的緩和は「非常手段」で、縮小はFRBと来年1月に退任が迫るバーナンキ議長の双方にとって悲願だった。
一方で、“緩和慣れ”した市場にショックを与えぬよう、縮小規模は小幅で滑り出し、事実上のゼロ金利も「相当長く」続けることを約束させられた。失業率改善は求職断念者の増加が影響しているとも指摘されており、雇用の足取りは重い。米経済は金融危機を脱却し改善を続けているとはいえ、力強さまでは取り戻せていない状態だ。
「経済が正常になったと判断できるまで、道のりはまだ長い」。量的緩和策に「出口」を見いだすという大仕事を終えた議長の嘆息が、米経済とFRBになお楽観が許されないことを示している。(ワシントン 柿内公輔/SANKEI EXPRESS)
≪日本にもプラス≫
日本経済にもプラスだ。(ドル資産の運用が増えて)ドル高・円安を促し、これが国内の輸出企業の収益を押し上げる。企業収益が上振れれば、企業から家計への波及効果もより強まるはずだ。そもそも米国の量的緩和縮小は、米国経済の着実な回復を示すものであり、株式市場では、当面は日米の株高を支えることになるだろう」(SANKEI EXPRESS)
・量的金融緩和の購入規模を縮小。来月(2014年1月)から米国債と住宅ローン担保証券(MBS)の購入をそれぞれ50億ドル(約5200億円)減額し、月額750億ドルとする
・雇用や物価が見通しに沿って推移すれば購入規模を一段と減額。2014年を通じ量的緩和を緩やかに縮小できる
・事実上のゼロ金利政策を維持する。失業率が6.5%を下回っても十分な時間が経過するまでゼロ金利を続ける