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インド集団レイプ、変らぬ現状に怒り 「いつも誰かが泣いている」
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インド・首都ニューデリー
インドで大規模な反レイプデモの引き金となった女子学生=当時(23)=の集団レイプ事件の発生から1年がたった。ちょうど1年目となった12月16日には、女子学生の死を悼む集会が首都ニューデリーで開かれ、事件の再発防止を求める声が上がったが、女性に対する性暴力が相次ぐ事態は何も変わっていないのが現状だ。
「私たちの涙は、まだ乾いていない。毎日が過ぎ去るに連れて、彼女の思い出は強まるばかりだ。家の中では、いつも誰かが泣いている」
インド紙アジアン・エイジによると、女子学生の父親は、集会でこう訴えた。母親は、レイプ被害者の支援のための基金を設立する意志を表明した。
女子学生が集団レイプ被害に遭った乗り合いバスに乗り込んだバス停でも追悼集会が行われ、約600人の学生が参列し、花輪やろうそくが備えられた。
この事件では、犯行手口のあまりの残忍さや都市部の中間層の女子学生の死に刺激された若者らがインド各地で大規模な反レイプデモを連日行い、政府は今年3月、レイプ犯に最高で死刑を適用する法令を成立させた。
女子学生の死亡後、その亡きがらが最後の入院先となったシンガポールからデリーに戻されると、マンモハン・シン首相(81)や与党国民会議派のソニア・ガンジー総裁(67)が空港に出迎えるなど、国民の怒りに配慮した異例の対応が取られた。
州に相当するデリー首都圏では、今月(12月)8日に開票された地方議会選挙で、地方政府でも与党だった国民会議派が惨敗し、汚職対策やレイプ犯罪対策の強化を訴えた新党が国民会議派を抑えて第2党に躍進、市民の現政権への不満を象徴する結果となった。
インドでは事件後も、新聞紙上に数々のおぞましい性犯罪事件が連日のように掲載されてきた。タイムズ・オブ・インディア紙が行ったアンケートによると、「事件から1年たって町が女性にとって安全になったか」との問いに「イエス」と答えた人はわずか5%にとどまり、「ノー」が94%にも上った。
地元メディアによれば、ニューデリーで今年11月までに報告されたレイプ事件は1493件と前年より倍増。わいせつ行為は4倍以上の3237件となった。法令の改正により、より多くの女性が被害を申告したことも件数増の要因になっているとはいえ、女子学生の父親は「大規模な抗議デモや法の改正があったのに、被害の状況は何も変わっていない」と嘆いている。
デリー政府は事件後、庶民の足であるオートリキシャと呼ばれる三輪車に衛星利用測位システム(GPS)を導入したり、女性専用のピンクの車両を導入したりすると表明していたが、いずれも実現を見ていない。
レイプ犯罪に対する罰則が強化されても、相変わらず法が適正に運用されていないとの批判も根強い。専門家は「法がきちんと順守されてこそ、その罰則の恐ろしさが効果を持つ。そうでなければ、あらゆる努力はうわべだけのごまかしに過ぎない」と批判している。(ニューデリー支局 岩田智雄(いわた・ともお)/SANKEI EXPRESS)