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7年後の東京にはAKIRAはいるのか 本年最後のブックウェアを飾る大友克洋 松岡正剛
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【BOOKWARE】編集工学研究所所長、イシス編集学校校長の松岡正剛さん=9月14日、東京都千代田区の「丸善丸の内店内の松丸本舗」(大山実撮影)
2020年の東京オリンピックが決定した。「これで日本も7年はもつ」とよろこぶ政財界を尻目に、とたんに代々木の国立競技場のデザインに景観・予算問題が噴き出て、猪瀬都知事が徳洲会(とくしゅうかい)の資金問題で引責辞任した。
大友克洋に驚いたのは『ハイウェイスター』『気分はもう戦争』『童夢』の連打のときだった。近未来の「不安」を少年と老人にひそむ「未知」を通して描くその才能に惚れた。ちょうど1985年の筑波万博のテクノコスモス館の総合演出を任せられたので、「超と極」というテーマを決めてすぐに、アトラクションスぺースのメインスペクタクルとして、大友君に「ダースベイダーのようで浮世絵のような風神雷神」のキャラクターデザインを依頼した。すばらしい6メートルの巨大イコンが2体出来上がった。
その後、『AKIRA』が登場して連載が進むうちに、さらに驚いた。東京の破壊的な未来、少年を襲う超能力、国家権力の強引な介在、コンピューターパワー自暴自棄、新興宗教教団の狂信的興奮、アメリカ軍との異様な関係など、さまざまな要素と伏線が交錯して、「壮大な近未来不安」をサイバー交響曲に仕上げているではないか。とくに、冷凍されていた少年アキラと潜在エネルギーシステムとしてのAKIRAとの、二重リバースモードがみごとだった。
その後、『AKIRA』は劇場版のアニメとなって世界の映像作家たちに激震を走らせ、SF界にも「大友以前・大友以降」と言わせるようになった。大友自身も、映像作家とマンガ家の人生をリバースエンジニアリングする“クリエイティブ装置”になって、『スチームボーイ』や『蠱師』の制作を手掛けた。
さて、『AKIRA』の筋書きは下欄を見ていただくとして、読者がきっと興味津々になるだろうと思われるのは、この物語が2020年の東京オリンピックに向かってネオ東京の狂乱を描くというふうになっていることだ。大友がこれを構想着手したときは、35年後の東京は不確実きわまりないと見たからであろう。
かつてアーサー・クラークとスタンリー・キューブリックが『2001年宇宙の旅』を構想し、制作したときも、おそらく近未来の異常はせいぜい数十年でおこると予想されたのである。諸君は、そんなこと、おこらなかったじゃないかと言うだろうか。ぼくにはHALもAKIRAもすでにわれわれをとっくに冒していると思われる。
2019年、東京湾上にネオ東京が建設され、その殷賑は爛熟を極めていた。旧市街は謎の新型爆弾によって壊滅的打撃を受け、いまだ再建途上にあった。政府と軍は翌年に迫る東京オリンピックをめざし急ピッチで「複合的大東京帝国」を建設している。暴走族を率いる金田とメンバーの鉄雄は、「爆心地」付近で白髪少年と遭遇した。軍の研究機関から反政府ゲリラが連れ出したタカシだった。鉄雄はこの遭遇以降、狂暴な性格に変じ、別の暴走族のニューリーダーとなって、金田とは抗争対立状態へ。軍はこの抗争に介入して、鉄雄・金田・ケイらを拉致し、謎のラボで超能力開発研究に参入させた。鉄雄はそこにいた冷凍中のアキラに異様な関心をもった。
鉄雄はラボを脱出すると、オリンピック・スタジアム地下の軍施設を襲撃する。メンバーたちは東京を襲った破壊力はアキラのせいではなかったかと思い、予知能力のあるキヨコはアキラが目覚めたときに全東京が崩壊すると感じ、みんなでアキラを連れ出した。鉄雄はSOLの執拗な追跡を受けていた。しかしアキラをめぐっては敷島大佐が率いる軍、金田たち、ミヤコの教団、超能力者グループなど数々の思惑と確執が絡まって、ついにアキラの潜在能力が解放されるに至った。アキラが強力な光芒を放つと、ネオ東京が吹き飛ばされた。政府と軍はコントロールを失い、アメリカ軍の工作が始まるのだが、鉄雄はアキラを「大覚」に祭り上げて、大東京帝国をでっち上げようとする。
鉄雄は被災者たちを救済するも、援助食料に薬物を混入させ、新たな超能力軍団を築こうとしていた。ミヤコの教団はその治癒に乗り出し、敷島大佐はSOLによるアキラと鉄雄の抹殺を計画し、東京湾上に陣取ったアメリカ軍空母はこれらの事態の有利な収拾をもくろんでいた。しかし、鉄雄のエネルギーはますます異様になるばかりなのである。こうしてついに鉄雄が宇宙大のエネルギーを内爆させ、事態は未曽有の混乱に向かっていった。登場人物の大半が巻き込まれ、最後の戦闘が繰り広げられる‥‥。『AKIRA』は劇場公開のアニメとなって海外でも大当たりするが、ストーリー展開はマンガ版とは異なっている。マンガ第4巻刊行時に劇場版制作を開始して、マンガの中断があったせいでもある。(編集工学研究所所長・イシス編集学校校長 松岡正剛/SANKEI EXPRESS)