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南極お気楽観光は「凍結」せよ 科学者から怒りの声
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日本の観測船「しらせ」 南極海で厚い氷に閉じ込められて動けなくなったロシアの海洋調査船「アカデミック・ショカリスキー」号の救出をめぐり、科学者から怒りの声が上がっている。
多数の観光客を乗せた学術的に意味のない“お気楽ツアー”だったことに加え、他国の砕氷船が救出作業にかり出され、観測・研究活動や物資補給に重大な支障が生じているためだ。
南極海では民間旅行会社によるクルーズ船の運航なども行われているが、ここ数年、北極海とは逆に海氷の増大が指摘されている。同様の海難事故が多発する懸念があり、安易な南極観光の規制を求める声も上がっている。
「われわれフランスはまだましだった。中国はすべての科学研究プログラムの中止を余儀なくされ、オーストラリアも貴重な夏の時期の研究が台無しになり、激怒している」
フランス極地研究所のイブ・フルノ所長は、フランス通信(AFP)の取材に、こう怒りをぶちまけた。
ショカリスキー号は昨年(2013年)12月24日のクリスマスイブに、南極のフランス基地から約1900キロ離れた海域で氷に阻まれて動けなくなった。近くにいた中国の砕氷船「雪龍」が救助に向かったが、こちらも航行不能に。
このため、オーストラリアが砕氷船を派遣、今月(2014年1月)2日に雪龍のヘリコプターでショカリスキー号に乗船していた74人のうち乗客52人を収容し救出した。
立ち往生したままの中露の船を救出するため、米国の沿岸警備隊が砕氷船を現地に派遣する事態となっている。
フランスの砕氷船も1週間にわたり救出を支援し、その影響で、海洋研究チームが予定していた2週間の調査活動が中止になったという。
各国に大迷惑をかけたショカリスキー号は海洋調査船とは名ばかりで、乗客デッキのほか、ダイニングルームやバー、図書館、サウナなどを備えており、これまでもオーロラ観賞ツアーなどにチャーターされたことがある。
今回もオーストラリアの探検家ダグラス・モーソン卿(1882~1958年)が行った南極探検の100周年記念として同じルートをたどるという観光色の強いツアーで、乗客の半数26人が観光客だった。
科学者19人、記者4人も乗船していたが、フルノ氏は「科学的見地からすれば、この記念遠征に何の意味もない」とバッサリ。
南極には学術研究などを目的とした各国の基地が約80カ所あり、10~3月の短い夏は調査・観測に加え、越冬のための食料や燃料を補給する重要な時期だ。ここ数年、南極海では海氷が増え、厚みを増していると報告されている。
実際、日本の観測船「しらせ」は一昨年と昨年夏、昭和基地への接岸を阻まれ、燃料不足が深刻化していた。今月(1月)4日に3年ぶりに接岸に成功したが、船首を氷に乗り上げさせて割る前進後退を2000回以上も繰り返したという。
南極大陸に上陸してペンギンを観賞したりするツアーは人気があり、ニュージーランドやチリを基点に実施されているが、各国の砕氷船が救助活動にかり出されるような事態が続発すると、基地への補給が断たれ、運営が危うくなりかねない。
フルノ氏は「南極を科学者以外立ち入り禁止にする理由はないが、観光については監視や規制をすべきだ。旅行会社は必ず救助できるよう準備しておく必要がある」と、警鐘を鳴らしている。(SANKEI EXPRESS)