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社会
「PM2.5」飛来の季節 国内にも発生源「地域ごとに解明を」
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中国の大気汚染で注目される微小粒子状物質「PM2.5」が日本に飛来しやすいとされる冬本番を迎えた。国は自治体が住民に注意を呼び掛けるタイミングを1日2回に増やし対策を強化した。ただ実際の飛来状況はよく分かっておらず、国内の発生源も無視できない。専門家は地道な調査の必要性を訴えている。
国がPM2.5の環境基準を設けたのは2009年、自治体の観測対象になったのは翌10年だ。中国からの「越境汚染」への不安が高まったことを受け、環境省は昨年(2013年)2月、自治体が住民に注意を呼び掛ける目安となる暫定指針値(大気1立方メートル当たりの1日平均濃度が70マイクログラム)を定めた。当初は早朝の測定で判断していたが、11月には午前中の観測も加えることにした。
環境省が昨年(2013年)3~5月の全国の測定値を分析したところ、暫定指針値を超えた日が7日あった。例えば(2013年)5月11日は四国地方で特異的に濃度が高く、愛媛県新居浜市内の2地点で指針値を超えた。局所的にPM2.5が発生した可能性がある。
大原利真・国立環境研究所地域環境研究センター長が昨年(2013年)1~6月の濃度を過去3年間と比較した結果、東日本、西日本とも過去とほぼ同レベルだった。一方、越境汚染の影響が小さいと考えられる昨年(2013年)7、8月の濃度が以前より高く、国内の要因が疑われる。大原センター長は「地域ごとに発生源を解明することが有効な対策につながる」と話す。
千葉県は昨年(2013年)11月4日朝、火力発電所や石油化学工場が集まる市原市内で高濃度を観測。国の暫定指針値を超える可能性があるとして県内に初めて注意喚起を出した。結果的に指針値は超えず、県は高濃度の原因を「汚染物質が拡散しにくい気象条件だったため」と分析。首都圏での発生が疑われ「近隣都県と連携して成分分析を進める」としている。
中国に近い福岡市では越境汚染を心配する声が強く、暫定指針値より厳しい環境基準(大気1立方メートル当たりの1日平均濃度が35マイクログラム)を超える可能性がある際にも注意を呼び掛けている。市内では例年5月に高濃度の日が多い傾向があるが「越境汚染と国内発生の割合はよく分からない」という。
産業技術総合研究所の兼保直樹主任研究員は「九州は越境汚染の影響が大きい。しかし中国の汚染物質の発生量が昨年になって、急に何倍も増えたわけではない」と指摘。「健康な人は過度に気にする必要はない」と冷静な対応を訴える。
自治体の取り組みが効果を発揮した例もある。東京都内のPM2.5の年平均濃度は01~11年度の10年間で約55%減少した。都は「ディーゼル車規制や、ダイオキシン対策の一環で廃棄物焼却炉の排出規制を強めたことが、結果的に減少につながった」と分析している。(SANKEI EXPRESS)