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藤十郎さん「曽根崎心中」お初、演じ納め 歌舞伎座4月講演

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藤十郎さん「曽根崎心中」お初、演じ納め 歌舞伎座4月講演

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1300回以上勤めてきたお初を、演じ納めることを明らかにした坂田藤十郎さん=2014年1月24日、東京都中央区(瀧誠四郎撮影)  歌舞伎の人間国宝で第20回高松宮殿下記念世界文化賞(演劇・映像部門)受賞者の坂田藤十郎さん(82)が、代名詞ともいえる上方歌舞伎「曽根崎心中」のヒロインお初を、4月の東京・歌舞伎座の公演で“引退”する。1953年から60年余りにわたり、ほぼ一人で演じてきた当たり役は、演じ納めとなる4月26日の千秋楽で通算1351回。惜しまれながら歌舞伎座新築開場1周年の晴れ舞台で区切りを打つことになった。

 お初と徳兵衛の悲恋を描いた「曽根崎心中」は近松門左衛門の心中物の代表作だが、江戸時代以来、長く上演が途絶えてきた。だが、53年8月、東京・新橋演舞場で宇野信夫さんの脚本、藤十郎さん(当時、二代目中村扇雀)のお初、藤十郎さんの父の二代目中村鴈治郎さんの徳兵衛で、歌舞伎で復活初演。社会的現象となるほど人気を集め、“扇雀ブーム”を巻き起こした。

 藤十郎さんは「お初に出会ったことで私の人生は変わった。運命ですね」と振り返る。以来、藤十郎さん以外にお初を演じたのは、次男の三代目中村扇雀さん(53)と孫の中村壱太郎(かずたろう)さん(23)だけ。2005年11月の四代目坂田藤十郎襲名の際にもお初を務めたほか、イギリス、ロシア、アメリカなどでも上演された。

 「演じるたびにお初の人生を生きてきた。4月は初演のときのような気持ちで、お初さんに感謝しながら演じたい」と話す藤十郎さん。初日を迎えるまでに、「お初天神」として知られる大阪・キタの露天(つゆのてん)神社にあるお初像に、報告に行く予定だという。(亀岡典子/SANKEI EXPRESS

 ≪この世でない美しさ≫

 ■日本文学研究者で米コロンビア大名誉教授、ドナルド・キーンさん(91)の話 「初めて藤十郎さんの『曽根崎心中』を見たのは、1953年12月の京都・南座。私が日本に留学した年でした。歌舞伎の女形の中でもこの世のものでないような美しさで、自分の目を信じられないほどでした。その後、『曽根崎心中』は文楽でも復活上演され、現在の日本の伝統芸能に大きな影響を与えたと思います」

 ■曽根崎心中 1703(元禄16)年、実際に露天神社(大阪市北区)で起きた遊女のお初と醤油屋の手代の徳兵衛の心中事件を脚色し、近松門左衛門(1653~1724年)が人形浄瑠璃に書き下ろした。同年、大坂・竹本座で初演され人気を博したが、心中の流行を恐れた幕府は上演を禁止。1953(昭和28)年に歌舞伎で復活上演され、2年後には文楽でも上演されるようになった。

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