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S・ヨハンソンさん、CM出演で慈善大使辞任 背景にパレスチナ問題
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イスラエル・首都エルサレム 米人気女優のスカーレット・ヨハンソンさん(29)が1月30日、世界各地で社会的弱者を支援する国際非政府組織(NGO)「オックスファム」の慈善大使を辞任した。最近CM出演した家庭用炭酸水メーカーがイスラエルの占領するヨルダン川西岸に製造拠点の一つを置いており、慈善団体の活動と相いれないとされたことが理由だが、ヨハンソンさんは反論している。根が深いパレスチナ問題が、華やかなハリウッドの世界にも影を落とした形だ。
ロイター通信などによると、ヨハンソンさんが出演したのは、イスラエルの「ソーダストリーム」社のCM。内容は、まずヨハンソンさんがバスローブ姿で登場し、炭酸水供給器を使って炭酸飲料を作ってみせる。するとほどなく、タイトな黒いワンピース姿になってストローを口にふくみ、セクシーな表情で炭酸飲料を飲んで「ごめんなさいね。コーラとペプシ」との“決めぜりふ”を言う-というものだ。
このCMは、2月2日にニュージャージー州で行われる米ナショナル・フットボールリーグ(NFL)の年間王者決定戦「スーパーボウル」の中継でも放映されることになっている。
ライバル社を揶揄(やゆ)するせりふがあるため、内容も問題視されているが、それ以上にヨハンソンさんの出演に難色を示したのが、2005年からヨハンソンさんが慈善大使を務め、英国を拠点に世界100カ国以上で慈善活動を展開しているオックスファム(1942年設立)だった。
オックスファムは声明で、「占領地での企業活動はわれわれが支援するパレスチナ人の貧困を助長し、人権を否定する。そのような企業を宣伝することは、オックスファム大使の立場とは相いれない」と訴えた。
これに対してヨハンソンさんは、「(ソーダストリーム社は)パレスチナ人にも雇用の機会を与え、平等な賃金、平等な待遇、平等な権利が享受されるための支援に尽力しており、イスラエルとパレスチナの平和の懸け橋となっている」と反論したが、結局、辞任した。公式には辞任の形をとっているが、実際には詰め腹を切らされたとみられている。
ヨハンソンさんが「この問題では埋めがたい根本的な意見の相違があった」として辞任したことについて、オックスファムは声明で、「辞任を受諾する。慈善大使としての8年間の多大な貢献には感謝する」と述べた。
ユダヤ人の国際組織である世界ユダヤ人会議(WJC、本部・米ニューヨーク)は、ヨハンソンさんの辞任について、「国際的ないじめにあっているソーダストリームを擁護した勇気ある言動は称賛に値する」との声明を出して、これを称えた。
最近、ヨーロッパでは、イスラエルの企業がパレスチナの占領地で生産する商品の不買運動が広がっており、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(64)が「偽善的な行為だ」と反発するなど、政治問題化している。
「ロスト・イン・トランスレーション」「アベンジャーズ」などで知られるヨハンソンさんは、ニューヨーク出身で、父はデンマーク系、母はユダヤ系。血筋的にはユダヤに近いと見られているが、無神論者を自認しており、イスラエルがユダヤ人の定義として必須条件にしているユダヤ教徒ではないため、ユダヤ人とは見られていない。(SANKEI EXPRESS)