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【アイスホッケー】「スマイルジャパン」闘いの軌跡

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【アイスホッケー】「スマイルジャパン」闘いの軌跡

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2014年ソチ冬季五輪会場。競技は、ロシア・ソチの市街地から約40キロ南東にある黒海沿岸の「アドレル」と、アドレルから約45キロ離れた山岳地域の会場「クラースナヤ・パリャーナ」の2カ所で実施。(C)Google  氷上で激しくぶつかり合いながら、スティックを使って黒い球(パック)をゴールに押し込む。アイスホッケーについてその程度の知識しかない日本人は多いのではないだろうか。だが、1998年の長野冬季五輪以来16年ぶりの五輪出場を決めたアイスホッケー女子日本代表「スマイルジャパン」の登場で状況は一変。日本中の耳目がスマイルジャパンに注がれ、連日メディアの露出が続く。『アイスホッケー女子日本代表の軌跡 氷上の闘う女神たち』は、スマイルジャパンのメンバーがソチ五輪代表をつかみ取るまでの軌跡を追ったスポーツノンフィクションだ。

 代表から外れたことでコーチに転身したものの強い思いからカムバックした選手、半年以上の体調不良が、実は病気だったとわかって「自分はスランプではなかったのだ」と胸をなで下ろした選手、練習時間確保のため大好きだった幼稚園教諭の職を投げ打ち、串焼き店で働いた選手…。取り巻く事情はさまざまだが、いずれもアイスホッケーに対するひたむきな思いや真摯(しんし)な姿勢がひしひしと伝わってくる。

 五輪代表決定までを描く

 著者の神津伸子さん(53)は、元新聞記者。夫の転勤で1994~98年までアイスホッケー王国のカナダ・トロントで暮らした。当時5歳だった長男は、少年ホッケー団や地域の選抜チームで活躍。帰国後もチーム探しや練習の送迎など、選手を子に持つ親の苦労を身をもって体験し、野球やサッカーのように注目されないマイナースポーツの悲哀も肌で感じたという。

 スマイルジャパンとの出合いは、昨年(2013年)2月、スロバキア・ポプラトで行われたソチ五輪アイスホッケー女子最終予選。テレビ中継されると知って気軽な気持ちでチャンネルを合わせた。

 「ノルウェーの選手は棒立ちなのに、日本の子たちはちょろちょろ動き回ってすごい」。第2ピリオドが終わって、スコアは1-3のビハインド。このまま負けてしまうのか…そんな重い空気を振り払ったのは、第3ピリオドの9分、キャプテンの大澤ちほがセンターラインから放ったショット。これが決まり、ムードが一変、その後の大逆転劇につながった。

 ヨーロッパの大女たちの間をぬう小気味いい動きとスピードを目の当たりにして、神津さんは「この子たちのプレーにはヨーロッパとは違った日本女子のスタイルがある」と感動。「これはアイスホッケーが世に出る最初で最後のチャンスになるかもしれない」との思いで、スマイルジャパンの取材を始めた。カナダに滞在し、息子とともにアイスホッケーに深く関わった神津さんの経験が何より役立った。選手本人たちはもちろん、その家族や周囲をとりまく人々が神津さんに胸襟を開いて語ったエピソードはどれも胸を打つものばかり。

 スマイルジャパンのメンタルコーチ、山家正尚さん(47)は自身のフェイスブックに「選手のエピソードを読みながら何度か涙を流してしまいました。私も知らない事が多く、すごくためになりました」と感想を記した。

 競技と仕事の両立も

 この本には、ソチ五輪出場決定に加え、東京での夏季五輪開催が決まったことが追い風になり、スマイルジャパンの選手たちがアルバイトに追われず、競技生活と働くことの両立を可能にする環境が整っていく変化も描かれている。

 8カ国で金メダルを競う女子アイスホッケーで、予選グループBの日本の初戦は2月9日のスウェーデンだ。「カナダとアメリカをのぞく、残り6チームに銅メダルのチャンスがあると思う」と神津さん。アイスホッケーが“世に出て”、日本のメジャースポーツの仲間入りができることを祈っている。(田中幸美(さちみ)/SANKEI EXPRESS (動画))

 【ガイド】

 ■グループB 日本の予選生中継予定

2・9 後4・30  NHK    スウェーデン

2・11後11・45 フジ系    ロシア

2・13後4・53  テレビ朝日系 ドイツ

 ※時間は放送開始。ほかに録画放送あり

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