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日本アニメ人気 ソフトパワーに「国境なし」
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日本の人気アニメ声優を招いたイベント終了後、来場した約200人のファンと記念撮影する関智一(ともかず)さん(左)と浅沼晋太郎さん=2014年1月25日、中国・上海市(河崎真澄撮影)
尖閣諸島(沖縄県石垣市)問題や安倍晋三首相(59)の靖国神社参拝などをめぐって反日感情が高まる中国だが、若者の間に広がった日本のアニメ人気は一向に衰えをみせていない。アニメ番組を見るだけではなく、アニメ声優の熱烈なファンやアニメ登場人物の模型愛好者など、マニアックな層も急増している。
「お会いできて本当に感激です!」。上海市内の劇場で1月25日に開かれた日本のアニメ声優を招いたイベント。終了後の握手会でお目当ての声優、関智一(ともかず)さん(41)と日本語で会話した中国人女性は、「関本命」と背中に大きくプリントしたTシャツを見せてサインをねだった。
関さんは「ドラえもん」のスネ夫役や「機動武闘伝Gガンダム」の主人公ドモン・カッシュ役などで知られる。この日は脚本や演出も手がける声優の浅沼晋太郎さん(38)と2人でステージに立ち、大半が女性のファン約200人を前に2時間近く日本アニメ談議を繰り広げ、アニメ番組の主題歌なども歌った。
イベントに参加した上海在住の女性、張怡寧(ちょう・いねい)さん(23)は、「子供のころから自分の好きなアニメの声はどんな人が演じているのかに興味をひかれ、日本語も自分で必死に勉強しました」と目を輝かせた。中国のアニメファンは日本語能力が高く、この日のイベントでも通訳が中国語に訳すまでもなく、来場者たちはボケやツッコミにもすぐ反応し、笑いにつつまれていた。
イベントを企画したのは北京の有名校、清華大学のアニメサークル「次世代動漫社」だ。動漫はアニメの意味で、サークルには卒業生を含め600人のメンバーがいる。清華大で電気工学を学んで博士号を得たOBの于智為(う・ちい)さん(32)は、「日中関係の悪化でここ数年、イベント開催には問題も生じたが、上海では民間劇場で開催できたのがうれしい。われわれが大好きなアニメに国境などない」と話した。于さんもアニメをきっかけに独学で日本語を習得した一人だ。
上海では今回、イベント会社の力を借りた。ネットで昨年(2013年)12月、このイベントの入場券を売り出したところ、握手会への参加とサインがもらえる限定60枚のチケット(598元=約1万円)は一瞬で売り切れ。最も安い席(280元=約4700円)もその日のうちに売り切れたという。于さんによると、この日のイベント参加のために、北京など北部や広東省広州など南部から上海までやってきたファンもいた。握手会では、あこがれの声優に直接会えたことで、泣き崩れながらも興奮気味に日本語で話しかける中国人の女の子が何人もいた。
于さんらは3月に、日本から有名なアニメソングの歌手を上海に招き、大がかりなコンサートを開く計画を進めている。
上海では昨年(2013年)10月から今年1月15日まで、精密模型で知られる日本の海洋堂(本社・大阪府門真(かどま)市)が制作したフィギュアを集めた展示会が開かれ、親子連れなどでにぎわった。日本の人気マンガ「北斗の拳」主人公の等身大フィギュアや、小さな恐竜の模型まで大小約4000点が並んだ。関係者によると展示会の開催には準備に3年かかったが、「(日中関係の悪化など)政治的な問題の影響はなかった」という。
また、人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」をテーマにした中国初の展示会も昨年(2013年)11月に開かれ、開幕当日はファンの長蛇の列ができて入場規制する騒ぎになった。会場には主人公が操るエヴァンゲリオンの頭部や登場人物の大型フィギュア、名シーンの再現スペースも設けられた。中国のファンは会場で写真を撮ったり、関連商品を買ったりして盛り上がっていた。
アニメ関係者は、「アニメを通じて日本など国際社会の価値観や優しい人間の感情などが中国の若者に波及することは、日本語の普及も含め、いわば日本外交の“ソフトパワー”としても望ましい」と話している。
中国版ツイッター「微信」では、「アニメ文化は日本のものだけではなく中国や世界のものだ」「日本は嫌いだがアニメは日本が世界一だ」との発言が広がる。しかし一方で、「日本人はアニメを利用して中国人を洗脳しようとしている。文化侵略だ」との負の反応もある。日本のアニメ関係者からみれば中国は、ネットで海賊版のアニメ番組が無料視聴できるなど、人気の高さの裏に知的財産権をめぐる課題もなお残されている。(上海 河崎真澄/SANKEI EXPRESS (動画))