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【勿忘草】命を頂く

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【勿忘草】命を頂く

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 米ロサンゼルス在住の妹が一時帰国した。日系企業に勤めており、日本へ戻ってきたのは休暇ではなく、なんと日本の本社への出張。時に5次会までいくという連夜の“日本式接待”にため息をつく妹を、なじみのレストランに連れ出した。

 何品目かに出てきたのは、フォアグラのソテー。ご存じ、世界三大珍味の一つだが、これを見たとき、妹がその日一番の歓喜の声を上げた。

 「フォアグラ! 1年ぶりくらい」

 妹が住むカリフォルニア州では、1年半ほど前からフォアグラの提供が禁止になった。隣接州に買いに行き自宅で食べる分には問題ないそうだが、さすがにそこまではしない、と妹は言う。ロスに残してきた旦那さまに「ごめんね」と謝りながら、おいしそうにほおばる姿に、笑みがこぼれた。

 フォアグラといえば、国内でもコンビニエンスストアの高級弁当の販売が「飼育方法が残酷で食材に使わないでほしい」との意見を受けて中止された。いずれも、ガチョウなどに過剰なエサを与えるのが動物虐待に当たるとの指摘だ。

 米大使の「日本の伝統的なイルカ漁に反対する」ツイートも話題になった昨今。宗教や文化などさまざまな理由で、食べるもの食べないものが分かれるのは仕方ないことだが、食べるからにはおいしく頂きたいし、違う文化の人たちに「あれを食べるな」と言うのも行き過ぎではないかと思う。

 西アフリカ・ブルキナファソに2カ月滞在したとき、お祭りで何やら黒っぽい物体がポリ袋に入って売られていた。バッタのような虫をフライパンで焦がしたおやつだった。

 「食べてみる?」と地元の人がぬっと虫を突きだしてみせる。恐る恐る受けとって口に入れると、ぱりぱり香ばしいが何の味もしない代物であった。まずくはないが、おいしくもない。味付けもいまいち。日本では絶対に食べないだろうと思ったが、ブルキナではこれも貴重な食糧なのだ。

 人は生きていくため無数の命を頂いている。哺乳類を殺し、育ちかけの植物を摘み取り、食べる。私たちにできるのは、自分たちを生かすために死んだ命に感謝しながら、おいしく食べることしかないだろう。(道丸摩耶/SANKEI EXPRESS (動画))

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