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「お茶」が築いた通商国家 イギリス 東インド会社、復活

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「お茶」が築いた通商国家 イギリス 東インド会社、復活

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 【Viva!ヨーロッパ】

 大英帝国による南東アジアの植民地支配の代名詞にもなった英国の「東インド会社」。お世辞にもよいイメージとはいえない社名をブランド名に、お茶を中心とした高級食材などを輸入販売する英国の貿易会社が話題を呼んでいる。なぜ、植民地時代にこだわるのか。東インド会社のロンドン旗艦店を訪ね、世界最高品質とされるお茶を試飲しながら、英国のお茶文化に浸り、社名“復活”の秘密に迫った。

 「性愛の茶」を試飲

 高級感あふれるロンドン中心部のオックスフォード・サーカス店の試飲コーナーには、インド最古の性愛書「カーマスートラ」から名をとったお茶が陳列されていた。

 早速、その「カーマスートラティー」に挑戦。口に含むと、オレンジの爽やかな香りとローズの甘い香りが広がった。残念(?)ながら、その名の“効果”は現れなかった。

 「バレンタインデーのプレゼントにぴったり。私たちのティーマスターが自信を持って進めるブレンドです」。売り子の女性はこう言って胸を張った。

 お店が準備したティーテイスティングでは、スリランカの高地で採集された「ホワイトティー」やダージリン一番芽、「王室のお茶」と呼ばれ、日本人に人気の「ロイヤルフラッシュ」「アールグレー」の4種類を試飲した。スプーンで空気と一緒に音をたてながらすする「正式な飲み方」を試すと不思議。普通に飲むのとは異なった味と香りがした。お茶の奥深さを感じた瞬間だった。

 ただ、値段は50グラムで58ポンド(約9900円)から9.90ポンド(約1700円)と決して安くはない。

 店では、世界のお茶120種類のほか、オレンジの皮やコーヒー豆などを入れたチョコレートやビスケット、ジャム、茶器や日本酒まで置いていた。「高品質でユニークな商品がモットーだ」という。

 中国で産業スパイ

 案内役のPR&イベントマネジャー、サバ・マーサーさんが、東インド会社の古いエピソードを教えてくれた。

 1600年にエリザベス1世(1533~1603年)の勅令で設立された会社は、アジアと香辛料や綿花などの通商を行ってきたが、当時、中国が独占していたお茶の栽培法を学び、お茶をインドなどで栽培し、加工。英国に輸出し始めるなど、「今流に言えば産業スパイ」をやって事業を拡大した。

 お茶を最初に英国に紹介したのも東インド会社だった。会社は帆船が持ち帰ったお茶を1664年に英国王チャールズ2世(1630~85年)に献上。国王には未知の商品だったが、中国茶の存在を知っていたポルトガル出身の王妃が気に入ったことから上流階級の間で人気の商品となったという。

 当時のグーグル

 お茶は18世紀に入ると英国で爆発的な人気を博し、ビクトリア女王(1819~1901年)の治世下で生まれたアフタヌーンティーは新しい上流階級の文化として広がった。

 高価なお茶に保険をかけて事故など不測の事態から担保する保険業など新事業もこの時代に誕生。マーサーさんは「東インド会社は現代に残る多くのビジネスモデルをつくった。当時のグーグルのような開拓者的な企業だった」と指摘した。

 さらに、植民地時代の負の側面については「否定はできないが、会社がつくった最高品質のお茶とその文化には大きな価値がある。休眠状態だった商標を2005年に買い取り、ブランドを復活させたことは意義がある」と強調した。会社は5年後の10年には旗艦店をオープン、クウェートやカタールなど中東、日本を含むアジアへの拡張を進めている最中だという。

 王族による文化遺産

 お茶の講義は終わりにして、天皇皇后両陛下が2012年5月、訪英時に宿泊されたロンドン中心部の名門ホテル、クラリッジズでアフタヌーンティーを試してみることにした。

 ピアノとベースの生演奏が流れるホテルのラウンジは、日常とは違う上流階級の別世界。お茶以外に出てきた5種類のサンドイッチとスコーン2種類、ケーキ3種類はとても食べきれなかった。料金は1人50ポンド(約8500円)からと、安くはないが、満席だ。

 「気に入らなければ、別なお茶をお持ちします」。教育の行き届いたウエーターがサービスする。ホテル側によると、日本人の利用客は多いという。

 歴史はさておき、お茶は通商国家として世界に拡大した英国の文化遺産である。(ロンドン 内藤泰朗、写真も/SANKEI EXPRESS (動画))

 ■東インド会社 英女王エリザベス1世の勅令で設立。17~19世紀半ばにかけて香辛料やお茶などのアジア貿易を独占、各地の植民地で独自の徴税や通貨発行のほか、法律も施行し、軍隊を保有して反乱鎮圧や他国と交易権をめぐる戦争も行った。英国の植民地支配に反抗するインド大反乱(セポイの乱)の後、1874年に解散させられた。2005年に復活した同名のブランドについては、以下のURLを参照。www.eastindiacompany.jp/

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