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文化三昧の「バルト海の真珠」 ラトビア・リガ

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文化三昧の「バルト海の真珠」 ラトビア・リガ

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 【Viva!ヨーロッパ】

 バルト三国の一角、ラトビアの首都リガは「バルト海の真珠」とたたえられる美しい港町だ。旧市街はユネスコの世界遺産(文化遺産)にも登録されている。そのリガが、今年は一段と熱気を帯びている。欧州連合(EU)からスウェーデンのウーメオとともに2014年の「欧州文化首都」に指定され、200以上の文化イベントが目白押し。さらにラトビアは1月1日から欧州単一通貨ユーロを導入し、旧ソ連構成国(1991年独立)から名実ともに晴れて欧州の一員になったのである。

 「人間の鎖」1.2キロ

 1月18日、リガは朝から氷点下12度と冷え込んだ。しかし、市民の心は、熱く燃えた。今年の欧州文化首都のオープニングイベントとして、歴史あるラトビア国立旧図書館からダウガバ川対岸に新築された図書館「光の城」まで約1.2キロを、人から人へ本を手渡しして移動させるという「人間の鎖」が行われたからだ。

 人間の鎖は、エストニア、リトアニアも含むバルト三国の人々が89年、独立運動の一環としてバルト海沿岸の道に沿って手をつなぎ、デモ活動を行ったことにちなむ。この日、鎖に参加した市民は1万4000人(市の人口は約70万人)。400万を超す蔵書のうち、2000冊を移動させた。文化省の担当責任者であるダイアナ・チブレ氏は地元メディアに「書籍は世代を超えて形成されてきた国の文化の真髄を守ってきたもの。市民一人一人が大切に本に触れ、移動リレーさせるというのは国際的にも類例がないイベントで、最初のイベントとして大変意義深い。また今年は、欧州で書籍の印刷が始まって500年の節目の年でもある」と語った。

 オペラや展覧会など

 今年1年、リガでは、オペラ、展覧会、フェスティバルを含めた数々の文化事業が予定されている。1月19日には国立オペラ座で、かつてリガで音楽監督を務めるなど縁が深いリヒャルト・ワーグナー(1813~83年)の歌劇「リエンツィ」が上演された。

 また、ラトビア出身の米建築家、グナー・バーカーツ氏(89)が設計した新図書館「光の城」では、500年の書籍印刷の歴史をひもとく展覧会が始まった。7月に行われる「世界合唱祭」では、リガ市内の各所を舞台に、世界約90カ国から2万人の歌声が響き渡る。リガのニルス・ウシャコフス市長(37)は「魅力いっぱいのリガに大勢の人が訪れてほしい。今年は海外から、昨年(2013年)の25%増の210万人の観光客が来てくれるものと期待している」と話す。

 悲願のユーロ圏

 一方、ユーロ圏入りは、約半世紀支配されたソ連から1991年に独立を果たした後、自国の安全保障を最大の理由として欧州に接近したラトビアにとって、EU加盟と並ぶ悲願だった。国民の一部には物価上昇や、財政危機が波及するリスクへの不安も残るが、ラトビア政府は国外からの投資増など経済効果を強調。リガのタクシー運転手、ヤニス・ロスコシュさん(23)は共同通信に「数年前の金融危機で失業が増え、一時、ユーロ反対派が優勢になったが、最近は賛成派の方が多くなった。外国の観光客が多く入ってくれば仕事が増えるのでありがたい」と話し、期待をにじませた。

 あなたも今年、文化三昧のリガを訪ねてみてはいかがか。きっと何か、熱い出会いがあるに違いない。モスクワからは空路で約1時間。北欧諸国からバルト海フェリーで入るというのも粋だ。(SANKEI EXPRESS

 ■欧州文化首都 欧州連合が指定する加盟国の都市で、1年間にわたり集中的に各種の文化事業を展開する。「真の欧州統合実現には文化が重要な役割を果たす」との理念に基づき、1985年にギリシャのアテネを最初の指定都市として始まった。99年までは毎年1都市、2000年以降は複数都市が指定されることが多くなった。11年以降は毎年2都市が定着している。単なる文化事業ではなく、観光振興など経済効果も大きい事業として注目され、希望する都市が増加。すでに33年までの、欧州文化首都が選ばれる国が決定している。

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