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【フィギュア】恩師にささげる22年間の集大成 鈴木8位 2大会連続入賞
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フィギュアスケートのジャンプ=2014年2月17日現在 ソチ冬季五輪のフィギュアスケート女子で、前回のバンクーバー大会に続いて8位入賞を果たした鈴木明子(28)=邦和スポーツランド。22年間のスケート人生のすべてをぶつけて2月20日、フリーを滑り切った。
両足の指に痛みを抱えていた。「ずっと足が不安な中で、靴を履けず、滑れない時もあったけど、氷に立ったら痛みがなくなった」
演目はミュージカル「オペラ座の怪人」。本番会場に足を踏み入れる際、長久保裕(ながくぼ・ひろし)コーチ(67)から「ここは劇場だから(ヒロインを見守る)ファントム(怪人)も見ているよ」と優しく声を掛けられた。3回転ジャンプで転倒し、着氷の乱れもあったが、情感たっぷりに滑りきり「ほっとした」と胸をなで下ろした。
演技終盤の音楽は、ファントムがヒロインに歌唱指導をする場面。鈴木は「ファントムみたい」と感謝する恩師2人に、このパートをささげた。一人はジャンプという「武器」を授けてくれた長久保コーチだった。
もう一人は「スケートに命を吹き込んでくれた」イタリア人振付師のパスカーレ・カメレンゴ氏だ。前回五輪後から振り付けやエッジワークなどの指導を依頼し、世界で評価される表現力を身につけた。円熟味あふれる演技で初優勝した昨年(2013年)12月の全日本選手権の後には、ミュージカルの作中のせりふを引用し「どこにその才能を隠していたの」と褒めてもらった。
大好きなスケートを28歳まで続け、再び五輪で思う存分舞った。「小さいころから音楽を聴いて、心から滑ってきた」という競技人生に笑顔で一区切りをつけた。
鈴木は試合後、「正直いって、ここまで続けられるとは思わなかった」と振り返った。その上で「いま駄目だから諦めるのではなく、遅咲きでも頑張れると、少しでも未来のスケーターたちや他の方にも伝わって、何歳からでもやろうと思った時にできる、という気持ちが伝わればいい」とも語った。
「先生が泣けるような演技じゃなかったけど、最後までついてくれたからここまでできた」と、長久保コーチへの感謝の言葉も忘れなかった。
≪五輪の壁厚く、村上12位 「望んだ演技できなかった」≫
19歳で初めて五輪の舞台に立った村上佳菜子(中京大)にとって五輪の壁は厚かった。SP(ショートプログラム)、フリーともミスが出た。自己ベストに25.93点も及ばない170.98点の12位で、目標の入賞に届かなかった。持ち前の元気さをところどころ出せたが、「全然、望んでいた演技はできなかった」と、唇をかんだ。
2月20日のフリーでは、冒頭の2連続3回転ジャンプをきれいに着氷した直後、3回転ジャンプが両足着氷となり、リズムを崩した。ジャンプ、ステップ、スピンとも大きなミスはなかったが、持ち前の伸びやかな滑りには到達できず、得点を伸ばせなかった。
SPでミスが出た前夜は落ち込んだ。この日朝の練習でも気持ちが締まらなかった。切り替えたのは練習後だった。
「最後の演技なので思い切りやろう」とリンクに立った。それだけに「ここで一番の演技をしたかったのに悔いが残る演技」と下を向いた。
孫のような年の村上を優しく見守った山田満知子コーチ(70)は「試合前は完璧にきていたし、こんなことになるとは思っていなかった、これが五輪というか、非常に残念」と落胆の色を浮かべた。
試合後に村上は「(五輪は)4年に1度しかないし、見えないプレッシャーをすごく感じて、原因が分からずにすごく怖かった」と振り返った。しかし、「この4年に1度の大会に出られたことは大きな収穫。試合への気持ちの持っていき方とか、課題は言い切れないほどある」と手応えもつかんだ。
報道陣に「再び五輪に戻ってきたいか」と問われ、「できたらいいなと思います」ときっぱり。浅田、鈴木が集大成の舞台を終え、新たなエースになる。ともに歩んできた山田コーチは「喜びも悲しみも素直に出すのが魅力」という。
村上は「(3月の)世界選手権では『この前のあなたは誰?』って言われるくらい良い演技をしたい」と誓った。4年後はきっと、とびきりの笑顔でリンクを舞うに違いない。(SANKEI EXPRESS (動画))