ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
エンタメ
一周回って、心に響く新しい一歩 SUPER BEAVER
更新
4人組ロックバンドのスーパービーバー(提供写真) 4人組ロックバンドのSUPER BEAVERは、2007年にインディーズレーベルより初作品をリリースし、09年にメジャーデビューを果たしたが、11年には所属レーベル、事務所を離れ、自分たちでバンドを運営する道を選んだ。自主レーベルを興して音源をリリースし、年間100本を超えるライブをこなし、バンドを鍛えた。そして今年2月12日、ニューアルバム「361°」をリリースした。
私が彼らのことを知ったのは、初音源を出した19歳ごろだったと思う。6年たった今、最新作を聴くと、バンドとしての成長と人間的な成長が音や歌詞に表れていると感じた。ストレートにたくましく音が鳴っていて、さまざまな困難を乗り越えた先に見えた希望やその過程で得た理解者との絆が歌詞に描かれている。
19歳の若者たちがあっという間にデビューの夢をつかんだ一方で、メジャーレーベルで活動する上での責任やビジネスとしての期待、バンドを担当する人たちとの歩調、方向性など、活動には思うようにいかないことが多々あったという。
「その当時、期待に応えられなかった自分たちも悪いが、どうしたらいいのか、その時はわかっていなかった」と、ギターでソングライターの柳沢は以前語ってくれた。
2年前の作品完成時、連絡を受けた私はメンバーと喫茶店で落ち合った。自分たちでCDを発注して、紙資料を作って関係者に手渡ししているので受け取ってほしい、とのことだった。今作は付き合いのあるライブハウススタッフから声がかかり、彼らのために新たにレーベルが立ち上げられ、リリースに至った。
「メンバー同士を信じて苦しい時期を乗り越えた。今は一人ではなく、歌うべき対象の『あなた』がいて、音楽やバンドを楽しむことが実感できている。活動を続けられたのは、自分たちを愛してくれ、自分たちも大好きな人たちがいてくれたから」
柳沢はバンドを支えてきてくれた周りの人たちへの感謝、そして諦めなかった自分たちが歩んだ道のりが、バンドの音やメッセージへと昇華されていることを語ってくれた。それこそがバンドの原点であり、見失ってはいけないものなのだと私自身も改めて教えられた気がする。夢の実現も挫折も味わい、一周回って新たに踏み出した一歩は、とても心に響く音楽になった。(音楽評論家 藤田琢己/SANKEI EXPRESS (動画))