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社会
「アンネの日記」事件がはらむ政治的危機
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「アンネの日記」関連書籍で被害の出た東京の5区3市=2014年2月25日現在、東京都
公共図書館に所蔵されている「アンネの日記」や関連本の損壊が相次いでいる。
産経新聞は2月27日の「主張」でこの事件について取り上げた。
<文化を育み伝え、言論活動を支える書籍を損ない、自由な読書を妨げる愚かな行為だ。誰がどんな理由でやったにせよ、許せない。
破られた本は、1月下旬から東京都杉並区や中野区などを中心に確認され、横浜市でも見つかった。被害は約40の図書館で300冊を超える。
特定の本をねらう執拗(しつよう)なもので、警察は器物損壊事件として異例の捜査本部を置いて捜査している。再発防止のためにも早期の解決を望みたい>
警察が捜査本部を設置したのは適切である。本件は、一般の器物損壊事件というよりも、警備公安警察が担当すべき政治的性質を帯びた事件と筆者は認識している。
産経新聞の主張は、<書籍破損の被害が同書やユダヤ人迫害を扱った本などに集中していることから、海外でも報じられ注目されている。
ユダヤ系人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」は「衝撃と深い懸念」を表明した。イスラエル大使館から被害にあった図書館に本が寄贈されるなどの動きもでている。
本を破った者の意図がどうあれ、多くの人の心を傷つけている事実を軽くみてはならない。欧米ではとりわけ、今回の行為は反ユダヤ主義的なものではないかともみられ、日本のイメージを損ないかねない問題だ>と指摘している。
筆者もこの主張に全面的に賛成する。本件によって、「日本でアンチセミティズム(反ユダヤ主義)」が拡大しているという印象が強まれば、日本の国益に深刻な打撃を与える。
2月末、筆者が親しくする元イスラエル高官が来日した。筆者が、「『アンネの日記』破損事件について、イスラエルの受け止めはどうか」と尋ねると、友人はこう答えた。
「本件はイスラエルでも報道されている。イスラエルでは、第二次世界大戦中にユダヤ人救済のために努力した杉原千畝(ちうね)氏(元在リトアニア・カウナス領事代理)や樋口季一郎(きいちろう)氏(元満州国ハルビン陸軍特務機関長)の業績がよく知られているので、今のところ日本で反ユダヤ主義が拡大しているという見方を示す人はいない。この事件については、愚かな個人によって引き起こされたものなのならば、大きなハレーションはない。ただし、『アンネの日記』を破損した人に政治的背景があると、問題はかなり深刻になる。
また、本件には米国のユダヤ人団体も強い関心をもっている。中国や韓国の反日勢力が、この事件を最大限に活用して、自らの政治的思惑を実現しようとしていることも過小評価しない方がいいと思う」
日本のマスメディアの反応に関して、本件がはらむ政治的危険性に対する認識が弱いように思える。
<26日付の中国人民解放軍機関紙、解放軍報は「日本のサイトで『アンネの日記は小説だ』とする言論が大量に見いだされる」と日本で歴史を否定する動きがあると批判。日記を破いても「記憶を消すことはできない」と指摘した。
韓国のSBSテレビは、日本のサイトにヒトラー生誕記念パーティー開催の呼び掛けがあったとして「日本ではヒトラーに追随する勢力が少なくない」と伝え、キャスターが「日本の右傾化はどこまでいくのか」とコメントした>(2月26日MSN産経ニュース)
警察が一刻も早く犯人を逮捕し、事件の背後関係を究明するとともに、法規を厳格に適用して、犯人に責任を取らせる必要がある。与野党を問わず、国会議員が本件を弾劾する意思をもっと明確に示して、中韓による対日包囲網の形成を阻止する努力をすべきだ。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)