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モダンでかわいく 岸田戯曲をコーディネート 舞台「パン屋文六の思案」衣装監修 豆千代さんインタビュー
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高尚と思われがちな岸田戯曲は、実はユーモラスにしてアバンギャルド。その世界観を、豆千代コスチュームが彩る(提供写真) ギンガムチェックにストライプ、市松、水玉、イチゴ柄に花柄…。「色&柄ミックス」は旬の着こなしのキーワードだが、それを和装でキメているのが、青山円形劇場(東京)で上演中のナイロン100℃の舞台「パン屋文六の思案~続・岸田國士一幕劇コレクション~」(潤色・構成・演出、ケラリーノ・サンドロヴィッチ=以下、KERA)の衣装の数々だ。
衣装を監修したのは、モダン着物のカリスマ、豆千代(44)。モダンな幾何学模様や水玉などポップな色柄を大胆に取り入れ、着物を現代風に洗練。それが若者の人気を呼び、女性のワードローブに着物を復活させた立役者だ。
「パン屋-」は岸田國士(くにお、1890~1954年)の短編戯曲7本を、KERAが巧みにミックスした作品。岸田は大正期の家族や恋人たちがおくる、ため息交じりの日常を、今に通じるしゃれた筆致でユーモラスに、からっと明るく描いている。
「全く古さを感じない物語。人の考え方や営みの、時代を超えた普遍性を浮き彫りにしている。劇中の着物も、大正ロマンといった概念にとらわれず、今風のモダンなテイストを感じられるように心がけました」と豆千代はいう。
戯曲賞に名を冠し、日本現代演劇の父と呼ばれる岸田の戯曲はきっと高尚なのではないか-。素人にはそんな“食わず嫌い”なイメージすらある。が、実は岸田ワールドは、滑稽洒脱でアバンギャルド。そんな面白さを「小難しい芝居でなく、ポップなパッケージに仕上げたい」と望むKERAの助けとなるのが、豆千代が常識にとらわれずミックスコーディネートしたモダンでかわいい衣装の数々だ。
例えば女性は、着物の中にブラウスを合わせ、飾り襟はレース、帯飾りにはパールのリボンブローチ、足元はソックスにパンプス。着物の中はワイシャツで、帯にサスペンダーをつけた男性の衣装も粋だ。着物や帯、半襟の布地には、欧州のデッドストック生地なども使ったという。時代どころか和洋も問わない。KERAはそんな豆千代の衣装を「ポップというかキッチュに近い感じ」と評する。
豆千代は現在、オランダ・アムステルダム在住。「和と洋、先進と古典、憧れと劣等感…相反する感情を織り交ぜながら、和や日本文化に対する誇りを持ったまま西洋文化を自由に取り入れ楽しんでいたのではないでしょうか」と大正時代の人々に思いをはせる豆千代もまた、同様の進取のスピリットやミックス感覚を持ち合わせているのではないだろうか。(津川綾子/SANKEI EXPRESS)
5月3日まで 青山円形劇場(東京)。キューブ(電)03・5485・2252