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時の流れのままに…主人公そのもの? 舞台「サニーサイドアップ」 荒川良々さんインタビュー

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時の流れのままに…主人公そのもの? 舞台「サニーサイドアップ」 荒川良々さんインタビュー

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 荒川良々(よしよし、40)は身長183センチの九州男児。テレビ出演するようになってもしばらくは「俳優やってるなんて、恥ずかしくて言えなかったから」と、親にはエキストラのバイトをしていると微妙な嘘をついていたほど、照れ屋のようだ。

 昨年(2013年)、「副駅長の吉田」役でNHK連続テレビ小説「あまちゃん」軍団の一角を飾ったが、「ああ、まあ、そうですね、普通に、おばさんや子供に町で副駅長と呼ばれるようになって…ああどうも、みたいな。都合1年近くかかわった長い仕事でしたからね…」。ぽつり、ぽつりと感想を語る横顔に、素朴な人柄がにじんだ。

 身の上話から着想

 そんな荒川が主演の舞台「サニーサイドアップ」(作・演出、ノゾエ征爾)が2月21日から本多劇場(東京)で上演される。

 劇作家で演出家、俳優でもあるノゾエとは、2回ほど舞台で共演。飲み仲間でもある。「ある時、一緒にお酒を飲んだんです。そのときに子供のころの話を聞かれまして…」

 その話を着想の一端にし、岸田國士(くにお)戯曲賞受賞作家ノゾエが書き下ろしたのは「40歳、俳優、九州出身」と荒川と履歴が重なり、名前も似ている、嵐山鯛(通称、たいくん)を主人公にした物語。荒川が演じる役だ。

 偶然面倒な事態に遭遇しても、見知らぬ人に手を差し伸べるようなお人好しのたいくんと、どこかさえない仲間たちの日々は、不条理な出来事に満ちている。だが、「すごく落ち込んだりはしない。でも、やり過ごすのでもなく、一つ一つ、なんでも真剣に向き合っている」タイプのたいくんは、事態を受け入れ、仲間と手を携えながら、ユーモラスに乗り越えて行く。

 物語はやがて、たいくんの半径3メートルをはみだし、地球史レベルにまで広がっていく。まるで、人生つまずきっぱなしでも大丈夫、ちゃんと未来に生命はつながっていく、と言わんばかりの展開だ。

 座右の銘は一生懸命

 今や売れっ子の荒川の来し方も、決して順風ではなかった。高校はラグビー部だけれど「1校強い学校があって、絶対花園には行けないという諦めのもとやっていた」。その後「大学受験はダメ(全敗)」で、1人暮らしがしたくて、福岡で簿記の専門学校へ。父親から「いつまでも福岡でぬるま湯につかるな」と言われ、東京へ出た。しかし、それがよかった。バイト先の友達が小劇場に詳しく、「友達に何となく勧められてオーディションを受けた。それがなかったら…今ごろは、実家の店を継いでたんでしょうか」。

 意志で切り開くというよりは、時の流れに身を委ねたような生き方は、たいくんと重なる。「実際、自分もくらげみたいな男です。流されてたら知らないうちに俳優に…みたいな。東京行って、一旗あげて、ということでもなかったし。こうやって生活できているのはすごいです」。最後に、座右の銘を聞くと「一生懸命やる、ですかね」。

 実は熱い男なのだろうか?(文:津川綾子/撮影:宮崎裕士/SANKEI EXPRESS (動画))

 ■あらかわ・よしよし 1974年1月18日、佐賀県生まれ。98年から「大人計画」に参加。舞台、映画、ドラマなど多方面で活躍。2008年公開の「全然大丈夫」で映画初主演。最近の出演作は舞台「ウェルカム・ニッポン」(12年)、映画「謝罪の王様」(13年)、ドラマ「海の上の診療所」(13年)、映画「ジャッジ!」(14年)など。

 【ガイド】

 2月21日~3月2日 本多劇場(東京)。森崎事務所(電)03・5475・3436

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