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インドネシア 強力な政権樹立は期待薄か

 4月9日に投開票されたインドネシア総選挙(一院制、定数560)は、最大野党の闘争民主党(PDIP)が勝利し、今年7月実施の大統領選を経て、10年ぶりに政権を奪還する見通しが強まった。しかし、闘争民主党の得票率は事前の想定より大幅に低く、次期政権もユドヨノ現政権と同様、利害の対立する複数政党による連立政権となり、停滞が目立つ経済の再生などに向けた強力な指導力を期待できないのでは、との懸念が早くも広がりつつある。

 「大番狂わせ」の総選挙

 インドネシアの英字紙ジャカルタ・ポストは4月11日付の社説で、闘争民主党の勝利について、「(野党時代の)10年間の忍耐と党勢立て直しが実を結んだ」と評価し、「有権者は改革の推進や、国民福祉と国益の増進を求めている」と期待を表明した。

 だが、国民的人気の高いジョコ・ウィドド・ジャカルタ特別州知事(52)を大統領候補に立てて選挙戦を展開した闘争民主党の得票率は、事前に予想された25~30%を大きく下回る19%(非公式集計)にとどまった。

 この「大番狂わせ」が起きた理由について、4月11日の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ、電子版)は、「ジョコ氏はこの約1年半、州知事としてたいした実績を残しておらず、国家指導者となるには早過ぎるとの批判もある」と指摘。WSJは(4月)10日の記事でも、「ジョコ氏の人気が実態以上に誇張されていた」「他党がジョコ氏への中傷攻撃を展開したことも結果に響いた」などとする見方を紹介した。

 問題は、総選挙の結果が大統領選と次期政権の行方を大きく左右することだ。

 苦境の次期大統領本命

 インドネシアの選挙法では、大統領選で候補者を正式擁立できるのは、総選挙で得票率25%以上、または国会定数の20%以上の議席を獲得した政党だけだ。この要件を満たせなければ他党と政党連合を組んで要件をクリアし、統一候補を立てる。闘争民主党は選挙後、国民民主党(非公式得票率7%)と国民覚醒党(非公式得票率9%)の支持を得たため、ジョコ氏の正式出馬は可能だ。

 だが、英誌エコノミスト(4月12~18日号)は、闘争民主党が総選挙で大勝した上で単独で大統領候補を擁立するという当初の計画が崩れ、「ジョコ氏が大統領選で苦境に陥るのは疑いない」と分析する。

 また、政治の表舞台への返り咲きを悲願とする、闘争民主党党首のメガワティ・スカルノプトリ前大統領(67)の執念深い性格が他党との連携を阻害する恐れもある。ウォールストリート・ジャーナル(4月16日、電子版)は、メガワティ氏が2004年の大統領選で自らを負かしたスシロ・バンバン・ユドヨノ現大統領(65)の民主党(非公式得票率10%)から次の大統領選での連携に向けた会談を打診されたにもかかわらず、これを拒否したと伝え、「インドネシア政界の古い遺恨が大統領選に影を落としている」と指摘した。

 寄り合いでは同じ轍

 一方、大統領選でジョコ氏と対決する公算が大きいのは、今回の総選挙で2位につけたゴルカル党(非公式得票率15%)のアブリザル・バクリ氏(67)、3位のグリンドラ党(非公式得票率12%)を率いるプラボウォ・スビアント元陸軍戦略予備軍司令官(62)。バクリ氏とプラボウォ氏は、闘争民主党の足踏みをにらみ、「反ジョコ包囲網」の結成を急ぐ。

 仮にジョコ氏が勝利したとしても、政権樹立に向けては、こうした有力政党などと連立を組み、閣僚として招き入れた上で政策調整を行う必要に迫られる。6党の寄り合い所帯であるユドヨノ現政権は、閣内の対立が足かせとなって燃料補助金制度改正などの重要政策を実行できなかった。次期政権が同じ轍を踏む恐れは大きい。

 隣国シンガポールの英字紙ストレーツ・タイムズ(電子版)は4月15日付の社説で「インドネシアの経済・民主体制は、際限ない議会での抗争や特定利益集団による政策のごり押しで生じる腐食作用に耐えられるほど成熟していない」とし、インドネシアの本格的発展に向け、次期大統領の手腕に注目する立場を示した。(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS

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