ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
国際
無人機ニアミス 商用に暗雲/3月 米フロリダ上空で旅客機と
更新
米フロリダ州タラハシー(州都) 米連邦航空局(FAA)当局者は5月9日、南部フロリダ州タラハシーの空港近くで今年3月、アメリカン航空グループの国内線旅客機と無人機がニアミスを起こし、衝突寸前だったことを明らかにした。無人機と旅客機のニアミスは極めて珍しい。米国では今後、無人機の商業利用が急速に拡大すると見込まれ、FAAは民間による商業利用の飛行規則を2015年以降に策定する方針だが、今回、その危うさが浮き彫りとなり、安全確保に向けて運用ルールの早急な確立が求められそうだ。
ニアミスの報告は、FAAの無人機部門の責任者、ジム・ウイリアムズ氏がサンフランシスコで開催された無人飛行機の見本市の中で明らかにした。AP通信などによると、ニアミスは今年3月22日、タラハシーの空港の北東約8キロ地点で起き、ノースカロライナ州シャーロットからタラハシーに向かっていたUSエアウェイズ4650便のボンバルディアCRJ200型機が空港に着陸しようとした際、高度約700メートルの上空で突然、小型無人機が現れ、危機一髪の距離まで近づいた。
無人機の種類や操縦者は不明だが、F4戦闘機に似た形をした固定翼の小型機だったという。
ウイリアムズ氏は「旅客機と無人機の距離があまりに近かったため、操縦士は間違いなく衝突したと思ったという。幸い、着陸後の点検で機体に損傷は発見されなかったが、いつもそうとは限らない」と述べた上で、「一つ間違えば大惨事だった。衝突だけでなく、小型無人機が旅客機のエンジンに吸い込まれる事故も非常に現実味を帯びている」と語った。
現在、米国では無人機の利用は軍事目的が主軸で、軍事以外で使用するにはFAAによる許可制が取られている。しかし、実際には警察や消防といった公共性の高い業務が主な認可先であり、米本土での無人機の商業利用は実質的にまだ禁止されている。
とはいえ、無人機はさまざまなビジネスシーンで、有人飛行機や人間より安くて有用な代替品になる潜在力を示し、企業運営の進め方に影響を及ぼし始めている。インターネット通販大手の米アマゾン・ドット・コムが昨年(2013年)12月、配達用の無人機を開発中だと発表すると、商業用の無人機利用が秘める大きな可能性がクローズアップされるようになった。
アマゾンの構想では、モーター駆動の8つのローターを備えた小型無人機を使い、搭載したGPS(衛星利用測位システム)で目的地まで自律飛行する。物流センターから半径16キロ以内での利用を想定し、注文から30分以内に配達できるという。
米インターネット検索大手のグーグルも先月(4月)、米無人機ベンチャーのタイタン・エアロスペースを買収したと発表した。タイタンは2012年に設立された新興企業で、太陽電池によって高高度を着陸や給油なしで5年間飛行できる無人機を開発している。グーグルは上空からのデータ配信に無人機を使い、まだ世界中で50億人以上いるとされるインターネットの接続環境がない人々に接続サービスを提供する手段として活用する計画を描いているという。
だが、技術先行が現状で無人機ビジネスが普及するには、法や飛行規則の整備遅れが障害になっている。上空から偵察や情報収集を行うことも可能なため、プライバシーの保護も課題になっている。今回のニアミスは米国の空に広がるリスクを改めて想起させたといえそうだ。(SANKEI EXPRESS)