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宙に浮くISS計画 日本もあいまい

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宙に浮くISS計画 日本もあいまい

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帰還を前にロシアの宇宙船ソユーズで飛行服のチェックをする若田光一さん(左)=2014年(若田光一さんのツイッターから、共同)  国際宇宙ステーション(ISS)船長という大役を果たした若田光一さん(50)は、宇宙大国の米国とロシアの飛行士を率い、有人宇宙開発の貴重なノウハウを会得した。関係者からは早くも第2、第3の日本人船長を期待する声が上がる。厳しく経費削減を迫られる中、日本はISS計画にどう関わっていくのか。国の議論は始まったばかりだ。

 ウクライナ情勢波及

 「ISSを少なくとも2024年まで運用する」。若田さんが長期滞在中の1月、米航空宇宙局(NASA)は国際会議で、運用を延長する方針を公式に表明した。会議に参加した下村博文(しもむら・はくぶん)文部科学相は「日本も前向きに考えるべきだ」と素早く反応した。

 ISSは宇宙での建設開始から15年間以上が経過した。各国は20年までの運用に合意しているが、その先は未定。NASAは小惑星や火星といった遠い宇宙に有人探査の重点を移しつつあり、ISSの取り扱いが注目されていた。

 老朽化で部品の故障も相次ぐISSだが、科学実験などの定常的な運用は順調だ。ウクライナ情勢をめぐり米国とロシアが対立する中で、ISSは数少ない両国の接点となり、予期せぬ形でも存在感を発揮した。

 しかし若田さんの着陸と同時期にロシアは米国に反発し、運用延長を拒否。最終決定かどうかは不明だが、地上の国際情勢から逃れられない姿も浮き彫りになった。

 減り続ける予算

 「これからの有人開発に、日本が貢献することはものすごくたくさんある」。4月下旬、文部科学省が宇宙探査の将来を話し合うために設置した小委員会の初会合で、宇宙飛行士の向井千秋さん(62)が訴えた。日本はこれまでISSに8000億円超を投資しているが、費用対効果が少ないとの批判は根強い。

 日本は国際的に分担しているISSの経費を、無人補給機「こうのとり」の物資補給で担っているが、打ち上げは15年分で終わる。宇宙基本計画は、16年以降の経費削減を迫っている。

 ISS関連予算は長く年間400億円程度だったが、既に減り続け14年度は357億円。若田船長の活躍もあり日本の存在感は高まったが、慶応大の青木節子教授(国際法)は「米国からの負担の要求も高くなることも考えられる」と懸念する。

 アジアの常任理事国

 青木教授は「技術はいったん途切れると、二度と復活できない」と、技術力維持のためにもISS計画への参加は有効と話す。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)はISSの活動を通じ「各国から信頼を得られた。宇宙の常任理事国の地位を確立した」とアピール。ISSに参加するアジア唯一の国として、宇宙に進出する中国やインドへの優位性を保とうと懸命だ。中国が月に無人探査機を着陸させるなど「アジアの主要国としての地位を奪われかねない」(青木教授)との懸念は強い。

 そんな中、日本の司令塔である内閣府の「宇宙政策委員会」は、今後のISS計画への判断をあいまいにしたまま。米国が提案した延長計画も「長期的課題」と位置付けただけで、議論は進んでいない。宇宙開発に詳しいノンフィクション作家の松浦晋也さんは「文科省に議論を投げている」と批判する。

 内閣府の山本一太宇宙政策担当相は、若田さんの成功を受け「第2、第3の船長の登場を期待する」と表明した。若田さんは帰還後「経験したことを、できるだけ多くの人に少しでも早く伝えたい」と述べ、貴重な体験を次につなげたい考えだ。(共同/SANKEI EXPRESS

 ≪露、24年までの運用延長を拒否≫

 ロシアのロゴジン副首相は5月13日、ウクライナ情勢を受け、宇宙開発分野での対露制裁を発動した米国を「信頼できないパートナーだ」と批判し、米国が要請している2024年までの国際宇宙ステーション(ISS)運用延長を拒否する方針を示した。

 15カ国が共同運用するISSは、現段階で20年までの運用継続で各国が合意している。米航空宇宙局(NASA)は今年1月、さらに4年間延長して24年までの運用方針を発表し、各国に協力を求めていた。インタファクス通信によると、露副首相は20年までのISSへの参画は「ロシアも必要」と指摘。しかし、20年以降は「資金を他の有望な宇宙計画に振り分けたい」と述べ、撤退の可能性を示唆した。

 現時点で、ISSへ宇宙飛行士を運ぶのはロシアの宇宙船ソユーズしかない。ロシアが撤退すれば、各国の有人宇宙開発に重大な影響が及ぶ。日本の関係者も「大きな痛手」と話した。

 保守派のロゴジン氏は、ウクライナ情勢を受け、米国がISS以外の協力関係の停止を決めたことに対し、「ISSにいる米国人宇宙飛行士に危険が及ぶことになる」「米国は、トランポリンでも使って飛行士をISSに届けたらいい」などと、恫喝(どうかつ)してきた。

 ロゴジン氏はまた、米国が露製ロケットエンジンを軍事目的で使用するのを禁止するとの措置も発表。米国の軍事衛星打ち上げ計画に支障が出る可能性が出てきた。さらに米国の衛星利用測位システム(GPS)を運用するためにロシアに設置された地上施設の稼働を、6月1日から暫定的に停止するとも語った。一連の対抗措置は、有人輸送手段を持たないオバマ政権に揺さぶりをかける狙いがあるとみられる。(SANKEI EXPRESS

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