ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
国際
指導力への疑問深めたオバマ氏「重要演説」
更新
「米国のリーダーシップのあり方を示す重要演説」(ジェイ・カーニー大統領報道官)と事前に喧伝(けんでん)した割には、内容に乏しかった。バラク・オバマ大統領(52)は5月28日の外交演説で「米国は常に世界の指導的立場にいなければならない」と宣言する一方、軍事力を背景にした「強い米国」の誇示よりも協調路線の重視を改めて強調した。しかし、力での現状変更をもくろむ中国やロシアを阻止するための明確な“処方箋”は示さず、アジア重視戦略には言及さえしないなど、かえって指導力の中身に疑問を深める内容となった。
「演説は(政権側の)大げさな売り込みには釣り合わず、おしなべて平凡で、戦略的な一撃にも欠け、彼の中傷者を黙らすには至らないだろう」
演説の内容には、オバマ政権の「応援団長」と揶揄(やゆ)されることもある米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)でさえ、5月28日付社説で、さじを投げた。
オバマ大統領は演説で「孤立主義」を否定し、国民や同盟国が危険にさらされるなど、米国の「核心的利益」が脅かされれば「単独でも軍事力を公使する」とした。
一方で、米国は過去に「軍事的な冒険」を強行し、高い代償を支払ってきたと述べ、直接の脅威がなければ同盟国や友好国との「集団行動」を取ると強調。中露の覇権主義が現実的脅威となった現状でも、軍事力をちらつかせてでも路線変更を迫ることに極めて慎重な「オバマ・ドクトリン」に変更がないことを改めて明確にした。
演説では政策の方向性を示す大づかみな“観念論”が基調となったため、具体的な案件への踏み込み不足は否めなかった。
一度は「リセット」を宣言した対露関係や、言行不一致が批判されるシリアに関するレッドライン(越えてはならない一線)、成果が見えにくいアジア重視戦略、「核兵器なき世界」や北朝鮮の核問題。米紙ウォールストリート・ジャーナル(アジア版)の5月30日付社説は「演説で語られたことよりも、語られなかったことに考えが向かってしまう」と皮肉った。
米シンクタンク「外交問題評議会」のリチャード・ハース会長(62)は、5月29日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)にオバマ大統領は「言い逃れをやめねばならない」と題して寄稿し、演説の概論に「間違いはないが、6年も務める現職(大統領)より、就任したばかりの人物にこそふさわしい」と内容の薄さを批判した。
5月29日付のフィナンシャル・タイムズ社説も「多くの同盟国は、彼の高尚な言葉と、いくつかの大きな地政学的挑戦から日常的に距離を置いていることとのギャップに、当然ながら、うんざりしている」と指摘した。
覇権主義を鮮明にする中国への明確な対応策に欠けていたことも不安材料だ。オバマ大統領は「中国の経済的台頭と軍事的拡大が近隣国の懸念を呼んでいる」「ウクライナ南部や南シナ海などで局地的な攻撃性が放置されれば、最終的には同盟国に影響を与え、米軍が巻き込まれる恐れがある」と述べたが、その言い回しには“ひとごと”との印象も拭えない。
中国共産党機関紙「人民日報」傘下の国際情報紙、環球時報(英語版)が5月7日付の社説で「中国は(南シナ海の)シナリオを異なった形にするための、さらなる力を持っている」「中国には南シナ海のチェス盤で米国に対抗する自信が、これまで以上にある」と語気を強める状況では、なおさらだ。
政権寄りのシンクタンク「ブルッキングス研究所」のマイケル・オハンロン上級研究員(53)は5月28日付の外交専門誌フォーリン・アフェアーズ(電子版)で、曖昧な言葉よりも「もっと直接的で明敏な対中政策(の提示)が最重要だっただろう」と指摘。オバマ政権は外交政策で「もがいているように感じられ、修正の時が来ている」と早急に対処するよう促した。(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS)