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インド マイノリティー間の衝突再び

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インド マイノリティー間の衝突再び

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インド・アッサム州  【国際情勢分析】

 インド北東部アッサム州西部で今月(5月)、イスラム教徒住民が少数派民族ボド族に襲われる事件が発生し、これまでに40人以上が殺害された。現地では2012年夏にも両者が衝突し、100人余が死亡した。今回は、インドで投票が進められている総選挙をめぐる対立が原因とみられており、両者の和解への道はなお遠い。

 イスラム教徒40人超殺害

 インド・メディアによると、最初の襲撃があったのは今月(5月)1日夜で、アッサム州西部コクラジャルとバクサで武装集団が女性や子供を含むイスラム教徒数人を射殺。5月2日夜にもイスラム教徒12人の遺体が見つかり、民家が放火された。

 その後も、7日に川で頭を撃たれた10歳の少女を含む5人の遺体が見つかり、死者は少なくとも41人に上っている。

 現地ではインドの下院(定数545)の任期満了に伴う総選挙の投票が4月24日に行われた。投票当日、ある投票所で警官が殺害される事件があり、村の男性たちの多くが取り締まりを恐れて、自宅を留守にしている最中にボド族の襲撃が起きたという。

 コクラジャルは、ボド族が主導して自治を行う「ボド地域自治区」(約88万人在住)の中心都市だ。付近では、ボド族とイスラム教徒というインドにおける民族と宗教の“マイノリティー間”の衝突がたびたび起きてきた。12年に103人が死亡した事件の以前にも、08年10月に64人が殺害されている。

 総選挙で対立再燃

 対立の根は、もともとボド族が多く住んでいた地域で、ベンガル系などのイスラム教徒住民が増えてきたことにある。この地域には03年に「ボドランド地域評議会」と呼ばれるボド族中心の自治組織と、ボド地域自治区が作られた。しかし、現在はボド族の割合は30%程度しかないとされる。多数派からの陥落で自治を主導する立場を脅かされているボド族は、イスラム教徒の人口増はバングラデシュからの不法移民のせいだと訴えてきた。

 今回の襲撃は、総選挙でイスラム教徒らがボド族候補に投票せず、別の独立系候補を支持したことにボド族住民が腹を立てたのが原因とみられ、現地の警察はボド族居住地域の解放を訴える反政府武装組織ボドランド民族民主戦線(NDFB)の仕業とにらんでいる。イスラム教徒側は、NDFBだけではなく、ボドランド地域評議会を主導する地域政党のボドランド人民戦線(BPF)が関与したと主張している。

 首相候補にも怒りの矛先

 今回被害に遭ったイスラム教住民グループは、村のボドランド地域自治地区からの分離や自衛のための武器の携行許可を求めていた。

 イスラム教徒で作る全アッサム少数派学生連合の代表、アブドゥル・ラヒム・アハメドさん(23)は、産経新聞の電話取材に「われわれがボド族候補に投票しないのは最初から明らかなことだ。襲撃は愚かな行為であり、ボドランド地域評議会は解散すべきだ」と反発している。

 また、最大野党、インド人民党(BJP)の首相候補、ナレンドラ・モディ氏(73)は最近、演説でバングラデシュからの不法移民流入の取り締まり強化を繰り返し訴えている。アッサム州ではBJPの影響力は限定的だが、アハメドさんは「こうした演説が緊張を高めさせた」と述べモディ氏にまで怒りの矛先を向けている。

 与党、国民会議派も「モディ氏はインドを分断させるモデルだ」(カピル・シバル連邦政府法相)と非難を強めているが、BJP側は「法と秩序を維持せず、武装集団の取り締まりをできない国民会議派のせいだ」と反論している。(ニューデリー支局 岩田智雄/SANKEI EXPRESS

 ■ボド族 インド・アッサム州やネパールの一部に住むボド語を話すモンゴロイド系民族。大半がヒンズー教徒で一部はキリスト教徒。アッサム州内の居住地域ボドランドの独立を目指した武装組織、ボドランド自由戦線は2003年に武器を置き、住民の自治を認めた「ボドランド地域評議会」と約9000平方キロの「ボド地域自治地区」の設立で政府と合意した。独立を目指す別の武装組織はなお存在する。

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