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アフガン 2016年末までに完全撤退 米大統領「2つの戦争」終結に道筋
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アフガニスタン軍・治安部隊とアフガニスタンに駐留する米軍(2001年~2014年)=2014年5月27日現在、※ブルッキングズ研究所による 米国のバラク・オバマ大統領(52)は5月27日、ホワイトハウスで記者会見し、2015年以降にアフガニスタンに駐留する米軍の規模を現在の約3万2000人から9800人に減らし、16年末までに全面撤退すると発表した。今年末までに戦闘任務を完了することも重ねて表明。オバマ氏は28日、ニューヨーク州ウエストポイントの陸軍士官学校の卒業式で演説し、撤退計画を踏まえた包括的な外交政策を示す。
オバマ氏は27日、アフガンのハミド・カルザイ大統領(56)に電話し、こうした方針を伝達。アフガンに展開する国際治安支援部隊(ISAF)に要員を派遣している欧州諸国の首脳とも電話で協議した。01年の米中枢同時テロを受けて駐留してきたアフガンでの戦闘終結はオバマ氏の公約。11年のイラク撤退に次ぐ転換点となる。
オバマ氏は記者会見で、「アフガンを完全な場所にするのは米国の責務ではない。アフガンの未来はアフガン人が決めるべきだ」と述べ、アフガン軍や治安部隊に治安維持への責任を持たせ、米国は支援に回る考えを強調した。
米国とアフガンは、6月14日に予定されるアフガン大統領選の決選投票で次期大統領が決まれば、駐留米軍の地位を定める「安全保障協定」を結ぶ。カルザイ氏は締結を拒否してきたが、決選投票に進出したアブドラ・アブドラ元外相(53)とアシュラフ・ガニ元財務相はいずれも前向きだ。
≪米大統領「2つの戦争」終結に道筋≫
オバマ米大統領は5月27日、アフガニスタン駐留米軍の撤退に向けた工程表を示すことで、ブッシュ政権から引き継いだイラクとアフガンの「2つの戦争」の終結という公約に道筋を付けた。
オバマ氏は次期大統領選がある2016年の末に全面撤退の期限を設定し、任期中に幕引きをする姿勢を明確にしたが、米軍撤退後に治安が悪化したイラクと同じ道をアフガンがたどらない保証はない。
ホワイトハウスでの記者会見で、オバマ氏はアフガン作戦の成果を強調した。
「(国際テロ組織)アルカーイダに重大な打撃を与え、(司令官の)ウサマ・ビンラーディンを抹殺した」
米軍部隊が11年5月、パキスタン北西部でビンラーディンを殺害したことはオバマ政権の成果といえる。09年に大統領に就任したオバマ氏は、イラク戦争を前政権の「負の遺産」として扱い、撤退を急いだ。これに対し、アフガンでは09年に3万3000人の増派を決めており、最大で10万人規模とした自らの戦争でもある。
オバマ氏は記者会見で「敵を決定的にたたき、選挙された政権に移行させ、治安部隊に全責任を持たせる。これが21世紀の戦争終結の形だ」と述べた。
米政府は9800人の残留部隊がアフガン軍や治安部隊に訓練を施すことで、「アフガンでアルカーイダが再編成できないようにする」(チャック・ヘーゲル国防長官)と強調している。
ただ、11年のイラク撤退後、イラクではイスラム武装勢力「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」などの活動が活発化し、相次ぐテロ行為により治安は悪化している。アフガンでも米軍の攻撃に際しアルカーイダをかくまったイスラム原理主義勢力タリバンの脅威は消えていない。
米国防総省は4月、議会への報告書で「アフガン治安部隊の能力は依然、発展途上の段階にある。軍要員の損耗は敵を上回り、汚職も続いている」と指摘。今後の治安部隊の能力は「来年以降の米軍と北大西洋条約機構(NATO)軍の規模による」とした。
来年以降、アフガンに残留する9800人で治安部隊や軍の能力を向上させられるかについては不透明で、野党共和党からは次期大統領選に向けて恣意的(しいてき)に全面撤退への道筋を設定したとの声も出ている。
「政治を優先させた記念碑的なミスだ。大統領はイラク完全撤退という大失敗から何も学んでいない」
共和党のジョン・マケイン上院議員(77)らは27日、オバマ氏をこう真っ向から批判する声明を発表した。オバマ氏が28日発表する外交政策の内容によっては、マケイン氏が指摘したように、「米国があてにならないとの認識が世界的に高まる」可能性がある。(ワシントン 加納宏幸/SANKEI EXPRESS)