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【ウクライナ情勢】「ロシア軍歓迎」 クリミア住民連呼

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【ウクライナ情勢】「ロシア軍歓迎」 クリミア住民連呼

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ウクライナの政権崩壊をめぐる主な動き=2014年2月18日~23日  ロシア上院がウクライナ南部クリミア自治共和国への軍事介入を承認した3月1日、クリミアの中心都市シンフェロポリでは、自治共和国の多数派、ロシア系住民がロシアの庇護を求めるデモを行っていた。「ロシア軍歓迎」を語るロシア系市民は、親露派政権が崩壊した政変について、首都キエフや西部とは異なる受け止め方をしている。

 「ロシア、クリミア、プーチン!」。数百人のデモ隊が巨大なロシア国旗を広げながら中心部を練り歩いた。行き交う市民も同調し、「ロシア! ロシア!」と連呼の声を上げる。

 運転手男性のプチュコフさん(47)は「私たちにキエフの大混乱は必要ない。欲しいのは安定と秩序であり、それをもたらしてくれるのはロシアとプーチン(大統領)だけだ。キエフのファシストこそがウクライナの分裂主義を招いている」と語った。

 キエフ中心部では、前政権打倒につながった独立広場(通称マイダン)のデモを支持し、治安部隊との衝突で死亡したデモ参加者を悼む声が多かった。昨年(2013年)11月に大規模デモが始まったのも、治安部隊との衝突で80人以上の死者が出たのも、主な責任は前政権にあるとの見方だ。

 シンフェロポリではこれに対し、キエフで発足した暫定政権は「非合法」であり、「マイダンの波及は許さない」という意見が多数派とみられる。キエフのデモ隊に過激な民族主義勢力が含まれていた点が強調され、「デモが平和的なら治安部隊が応戦する必要もなかった」とされる。

 デモ参加者や多くの市民が、ロシアで大祖国戦争(第二次大戦の独ソ戦)の戦勝記念日に配布される黒とオレンジの「ゲオルギーのリボン」を付けているのも特徴的だ。西部との認識の溝が、歴史に根ざしていることを示している。

 「キエフで成立したのはネオ・ファシスト政権であり、その価値観を受け入れることはできない。ロシア、ウクライナ、ベラルーシの3民族は同じ根から派生した枝であり、同盟であるべきだ」と教員女性のリュドミラさん(55)。

 西部のウクライナ民族主義者が大戦期、対ソ連パルチザン闘争の一貫でナチス・ドイツに協力したとの見方に立ち、彼女は「民族主義者を英雄視する人々と同じ国にとどまることはできない」と力説した。(シンフェロポリ 遠藤良介/SANKEI EXPRESS

 ≪NATO介入 米露直接衝突を招く恐れ≫

 北大西洋条約機構(NATO)は3月2日、ロシアがウクライナ南部クリミア半島への軍事介入を決めたのを受け、加盟28カ国の大使級による緊急理事会とウクライナ代表との会合を開き、対応を協議する。だがNATOによる軍事介入は、西欧諸国を主導する米国とロシアとの直接衝突につながりかねず、実行に移すのは極めて困難だ。

 ウクライナは1990年代後半以降、NATOから軍近代化の支援を受けてきたほか、アフガニスタンでもNATO軍主体のISAF(国際治安支援部隊)に駐留部隊を派遣している。ウクライナが攻撃され、混乱が広がれば、欧州の安全保障情勢にも重大な影響を及ぼすのは必至だ。

 ただ、ウクライナはNATO加盟国でないため、ウクライナが攻撃されても、NATOがただちに集団的自衛権に基づく軍事行動を起こすことはない。緊急理事会は、ウクライナ支援の方策について協議し、NATOとしての結束を確認し、ロシアを牽制(けんせい)するとみられる。

 しかし今後、ロシアがクリミア半島だけでなく、やはりロシア系住民が多いウクライナ東部でも軍事作戦を展開する事態となれば、先にウクライナの「主権と領土の一体性を支持する」と表明したNATOも、軍事介入の検討に踏み切るとみられる。

 だが、NATOを実質的に束ねる米国では、米露の直接対決につながる米軍の軍事介入について、保守派の間でも「実行不能な選択肢」(ヘリテージ財団のスティーブン・ブッチ外交安全保障政策センター長)との見方が支配的だ。それ以前に、米国内の長期的な厭戦(えんせん)気分と国防予算の削減を背景に、オバマ大統領は「世界の警察官」という役割を放棄している。

 オバマ政権は、NATOの枠組みで軍事力行使を検討する場合も、英仏などに作戦の主導権を実質的に委譲しておきながら「後方から指揮している」と言い張った、2011年のリビア空爆の時のような対応を繰り返す可能性もある。そうなれば、米国の指導力にさらなる疑問符がつけられるのは避けられない。(ワシントン 青木伸行/SANKEI EXPRESS

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