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「力で封じ込めろ」露がウクライナにメッセージ

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「力で封じ込めろ」露がウクライナにメッセージ

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ウクライナ・首都キエフ市街  【佐藤優の地球を斬る】

 反体制派デモ隊と治安部隊の大規模衝突でウクライナ情勢が緊迫している。

 「停戦」合意後も銃撃戦

 <ヤヌコビッチ大統領は20日までに、野党指導者3人との協議で「停戦」に合意し、情勢正常化に向けた交渉を始めると約束した。ただ、デモの暴力化を招いた過激民族主義勢力は合意内容を拒否。現地の報道によると、キエフでは同日の合意後、銃撃で負傷者が出た。

 (中略)18日の大規模衝突は、過激民族主義勢力が銃器や爆発物も用いて扇動した可能性が指摘されている。過激民族主義勢力の連合体「右派セクター」の代表者は、大統領との協議に参加していないことを理由に「停戦合意」には従わない考えを表明した。

 ウクライナ保健省は20日、今回の衝突による死者が28人に増えたことを明らかにした。治安部隊側の死者も10人にのぼった>(2月20日MSN産経ニュース

 反政権樹立の動き警戒

 第二次世界大戦後、ソ連によって併合された西ウクライナ(ガリツィア地方)では、伝統的に反ロシア感情が強く、排外主義的な民族主義団体が存在する。また、ガリツィア地方出身者がカナダに多く居住しており、ウクライナの民族主義団体に資金援助を行っている。ロシアは、これらの動きがウクライナに反露政権を樹立する動きであると認識し、警戒感を強めている。

 2月20日、露国営ラジオ「ロシアの声」は、本件に関するクレムリン(露大統領府)の姿勢についてこう報じた。

 <ロシアは、キエフでの過激派勢力の行動を強く非難し、クーデターの試みであると理解している。ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官が明らかにした。

 ペスコフ報道官は、過激派勢力は恩赦が発表されるやいなやすぐに暴力的行動を開始した、と指摘した上で、「ウクライナ各地で政府施設が占拠されているほか、治安関連施設から武器を奪おうとする試みも見られる。」と語った。さらに状況打開の可能性について、「プーチン大統領の意見では、状況をどのように解決するかというのは、ウクライナの合法的政府の絶対課題である。」という。

 今ある情報では、キエフでの騒乱で26名が死亡、そのうち10名が内務省職員。内務省側は、銃火器は使用していないとしている>(http://japanese.ruvr.ru/2014_02_20/128911291/

 ソチで冬季五輪が開催されているため、ロシアはウクライナに対する露骨な内政干渉にならないように細心の注意を払いながら、ヤヌコビッチ政権に対して「事態を力で封じ込めろ」というメッセージを送っている。

 極秘裏に特殊部隊派遣も

 ウクライナ問題に関しては、プーチン大統領に比べてリベラルであると欧米で受け止められているメドベージェフ首相が前面に乗り出している。

 <ロシアのメドヴェージェフ首相は20日、ロシアはウクライナとの完全な合意実現を目指すとの考えを表明した。

 一方でメドヴェージェフ首相は、全面的な協力をするためには、ウクライナ政府が合法的で強く、かつ国民を保護する力を持たなければならないと指摘した。

 メドヴェージェフ首相は、「ウクライナは、国民と治安機関を保護しなければならない」と述べ、「その時、我々は全面的な経済協力を発展させることができる」と強調した。

 伝えられたところによると、ロシアは昨年12月、ウクライナ経済を支えるためにウクライナのユーロ債150億ドル分を買い入れることで合意したが、まだ30億ドル分しか払い込んでいないという>(2月20日の「ロシアの声」http://japanese.ruvr.ru/2014_02_20/128960447/

 事態が収拾しないとロシアが極秘裏にFSB(連邦保安庁)の特殊部隊を派遣し、ウクライナ政府を支援すると筆者は見ている。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS (動画))

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