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【一般教書演説】オバマ米大統領、中朝触れず アジア重視は形だけ

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【一般教書演説】オバマ米大統領、中朝触れず アジア重視は形だけ

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1月28日、米首都ワシントンの連邦議会で一般教書演説をするバラク・オバマ大統領=2014年(AP)  ≪格差是正へ「行動の年」≫

 バラク・オバマ米大統領(52)は1月28日夜(日本時間29日)、上下両院合同会議で一般教書演説を行った。野党共和党の抵抗で停滞する政策の断行を目指し「今年を行動の年とする」と宣言。議会を迂回できる大統領令を使って、経済成長の鍵と位置付ける格差是正や、中間層の支援策などを進める決意を示した。

 医療保険改革をめぐる混乱や米情報機関の個人情報収集疑惑で政権支持率は低迷しており、今年秋の中間選挙を見据え反転攻勢を狙う。

 一般教書は憲法に基づき大統領が年頭の施政方針を示す重要演説。オバマ氏は「アジア太平洋地域との新たな貿易協定が雇用創出を後押しする」と述べ、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉妥結に意欲を表明。また妥結後の円滑な発効に必要な「大統領貿易促進権限」の確立を求めた。

 外交面では、紛争や安全保障上の課題を武力で解決することは極力避け、戦わずに外交を通じて着地点を探る姿勢をあらためて鮮明にした。

 オバマ氏は「アジア太平洋地域への重点的な取り組みを続ける」と述べ、台頭する中国を見据えたアジア重視戦略の継続を確認。日本への直接の言及はなかった。

 イラン核開発問題では欧米など6カ国とイランの合意で進展を阻止したと強調。イランが合意を順守しなければ「新たな制裁を科す」と警告した。シリアの化学兵器廃棄をめぐっても米外交の成果と指摘した。

 今年末までのアフガニスタンからの米軍戦闘部隊撤退に触れ「米国の最も長い戦争が終わる」と述べ、米海軍グアンタナモ基地(キューバ)のテロ容疑者収容施設の年内閉鎖の必要性も訴えた。

 演説の大半は経済や内政問題に割かれた。オバマ氏は、米国の経済成長の一方で「(貧富の)格差は拡大している」と危機感を表明。大統領令で連邦政府の契約企業職員らの最低賃金を引き上げる方針を示した。

 不法移民の米国籍取得に道を開く移民制度改革では、上院を通過している関連法案の年内成立の必要性を訴えた。(共同/SANKEI EXPRESS

 ≪中朝触れず アジア重視は形だけ≫

 大半は中東・アフガン

 オバマ大統領は一般教書演説の中で、アジア重視戦略の継続を表明した。だが、中国の「脅威」と北朝鮮の核問題など、北東アジア情勢には一切触れず、アジア重視の「体裁を取り繕っただけだ」(共和党のマルコ・ルビオ上院議員)との批判を招いている。

 1時間強の演説のうち、外交・安全保障政策に割かれた時間はわずかで、その大半が中東、アフガニスタン問題で占められた。

 そうした中でオバマ氏は、アジア太平洋地域に言及し「重点的な取り組みを続け、同盟国を支援し、より大きな安全と繁栄の未来を形成する」という表現で事実上、アジア重視戦略を確認した。「フィリピンのように自然災害により壊滅した国に(支援の)手を差し伸べる」とも指摘した。しかし、東シナ海上空に防空識別圏を設定するなど覇権拡大と実効支配の動きを強め続ける中国の「脅威」には、口を閉ざした。

 中国が「新型大国関係」の秋波を送った、昨年(2013年)6月の米中首脳会談で両国関係の潮目は変わっている。一般教書演説で「脅威」に言及しなかったのも、「新型大国関係」に配慮したためとの見方もある。

 アジア重視戦略を推進したゲーツ元国防長官とクリントン前国務長官が政権を去り、アジア重視戦略に対するオバマ氏の関心が薄れた、との指摘もあるが、日本や東南アジア諸国の一部にすれば、「不満」と「失望」を禁じ得ない。

 北朝鮮の核問題についてオバマ氏は昨年の一般教書演説では、直前に北朝鮮が核実験を実施したこともあり、「国際社会を主導し断固たる措置をとる」と述べている。北朝鮮の核問題は依然として国際社会の重大な脅威で、しかも張成沢(チャン・ソンテク)氏の処刑という重大な情勢変化にもかかわらず今回、触れなかったことは不可解だ。折しも、デービース北朝鮮担当特別代表が日韓などを訪問中で、外交が動いている最中であることが理由との見方もある。

 「世界の警察官」返上

 また、今年も日本と日米同盟に言及しなかった。悪化する日韓関係や、日米韓同盟関係も触れなかった。

 一方、国際社会における米国の指導力を、オバマ氏は「脅威に対し防衛することのみならず、協力を促進することなどだ」と定義づけた。米国の指導力低下を批判する国際世論への反論であり、「世界の警察官」の役割をもはや果たさない、との意思表明でもある。(ワシントン 青木伸行/SANKEI EXPRESS

 【米一般教書演説骨子】

・今年を行動の年とする

・議会の同意が必要ない大統領令を活用

・中間層を底上げし、格差是正

・米外交がイラン核開発の進展を阻止

・アジア太平洋地域重視を継続

・環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の妥結目指す。大統領貿易促進権限獲得に努力

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