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人と親密になろうとする姿描きたかった 映画「her/世界でひとつの彼女」 スパイク・ジョーンズ監督インタビュー
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「僕が関心があるのは人と人がどうすればつながることができるのかということ」と語るスパイク・ジョーンズ監督=2014年5月28日、東京都中央区(早坂洋祐撮影) 本年度の米アカデミー賞で脚本賞に輝いた「her/世界でひとつの彼女」のスパイク・ジョーンズ監督(44)が先日、4年半ぶりにプロモーションで来日した。アップルストア銀座(東京都中央区)で催されたトークイベント「Meet the Filmmaker」に登壇した監督は、六本木、渋谷、原宿の街を楽しんだことを明かし、「私にとって日本のカルチャーは未知のものです。日本独特のビジュアルを楽しんでいますよ」と語った。
本作は、近未来を舞台に、女性の声を持つ人工知能型OSに恋をしたセオドア(ホアキン・フェニックス)の姿を描く異色のラブストーリーだ。ある日、最新型OSに魅せられたセオドアは、早速購入しコンピューターにインストールする。「
サマンサ」(声・スカーレット・ヨハンソン)という名のOSはセオドアと会話でき、次々と知識を習得し、やがては感情のようなものが芽生え始める。最初こそ戸惑っていたセオドアだったが、少しずつサマンサと心を通わせるようになる。
もっともジョーンズ監督は5年前に脚本を書き始めたときから、殊更に人間とテクノロジーの関係のみに焦点を当て、奇をてらった作風にしようなどとは考えていなかった。「現代は情報技術が発達した結果、人間と人間の関係がうまく築けないといわれていますが、昔だって別のことを言い訳にして同じことが起きていました。コミュニケーションの形は日々変わっていきますし、情報量が多いのが現在です。そんな状況の中で、私は人間と親密になろうと挑戦する姿を描きたかったのです」。ちなみに登場するすべてのキャラクターにジョーンズ監督の姿が少しずつ反映されているそうだ。
主体性を持ったOSとの恋愛物語を描くことで、ジョーンズ監督が付けた原題「her」もおのずと実に示唆に富んだものだということが分かってくる。
ジョーンズ監督は「なぜタイトルを『She』にしなかったのかとよく聞かれます。英語の『her』は、主観的な色彩を帯びていて、親密な感じを抱かせますが、『She』の方は客観的なんです」と指摘したうえで、「主人公の頭や心の中で起きていることや、作品が彼の視点から描かれていることをかんがみても、『her』の方がぴったりだと考えました」と説明した。6月28日、全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:早坂洋祐/SANKEI EXPRESS)