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【マレーシア機撃墜】親露派の発射 米「非常に明白だ」
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マレーシア機撃墜の状況=2014年7月3日と7月18日、ウクライナ東部。※日時は現地時間。ウクライナ国防当局調査機関の資料を基に作成 ウクライナ東部でマレーシア航空機が撃墜された事件から4日。ウクライナはロシア側からなおも兵器流入が続いていると訴え、米国は撃墜を親露派武装勢力によるものとして、対露圧力を強めている。
ウクライナ国家安全保障国防会議のリセンコ報道官は7月20日の記者会見で、19日から20日にかけ、ロシア側から東部ルガンスクに4台の戦車や弾薬を積み戦闘員を乗せた7台の軍用車と、4基の自走多連装ロケット砲「グラード」(BM21)などが流入したことを明らかにした。事実とすれば、ロシアが国際社会の要請を無視する形で親露派勢力を抑える影響力を行使していないばかりか、紛争をあおっている疑いもある。
ロシア情勢に詳しい軍事筋によると、親露派勢力は6月下旬ごろから、露軍の支援を受け、高性能防空ミサイルなどを使用。15機以上のウクライナ軍のヘリコプターを撃墜させるなどして脅威を与え、戦力の劣勢を補っていたという。
ウクライナ軍事筋は「ウクライナ軍に追い詰められた親露派は、ミサイルなどの重火器に頼るようになり、マレーシア機の撃墜事件を引き起こした」と語る。
一方、ジョン・ケリー米国務長官(70)は20日放映されたテレビ5社のインタビューで、親露派武装勢力の支配地域からブク(SA11)地対空ミサイルが発射された直後にレーダーからマレーシア機の機影が消えたなどの「状況証拠」を挙げた。その上で、ロシアからブクを受け取った親露派により実行されたことが「非常に明白だ」とした。
ケリー氏は一連の番組で、数週間前にロシアから装甲兵員輸送車、多連装ロケット弾発射機、戦車などを含む約150両の車列が国境を越えてウクライナ東部に入り、親露派に渡されたことを公表した。
このほか(1)ミサイルの軌道や発射地点を把握している(2)過去数カ月で輸送機2機を含めた12機のウクライナ機が撃墜された(3)ロシアに戻されたブクからミサイル1基が失われていた-などの情報を挙げた。米政府は親露派が撃墜したことを確実視する一方、情報を裏付けるため徹底的な調査を受け入れるよう親露派やロシアに対して強く求めている。
ケリー氏は番組で「酔っ払った親露派が犠牲者の遺体をトラックに詰め込み、墜落現場から運び去った」と語り、親露派による証拠隠滅に強い危機感を表明した。また、「ロシアのプーチン大統領は全面的な調査を確実にするために努力すると言いながら、(7月)18日は75分間、19日は3時間しか(調査団が)現場に接近できなかった」と非難した。(キエフ 佐々木正明、ワシントン 加納宏幸/SANKEI EXPRESS)
≪プーチン大統領「事件の責任はウクライナ」≫
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(61)は7月21日、マレーシア機撃墜事件について、ビデオ声明で「ウクライナ東部の戦闘が再開されていなければ、悲劇も起きなかっただろう」と述べた。事件の責任はウクライナにあるとの見解を改めて示した形だ。プーチン政権が、親露派武装勢力との「決別」を宣言するのは難しく、政権がいっそう態度を硬化させる可能性も指摘されている。
プーチン氏は声明で、親露派を東部の「代表者」と称し批判を避けた。国際民間航空機関(ICAO)の専門家や「しかるべき国際委員会」による現地調査が不可欠だとし関係者に安全確保を呼びかけた。プーチン政権は和平交渉失敗の責任をウクライナ側に転嫁しており、撃墜事件もその延長にあると主張している。
主要テレビも非がウクライナ政権にあるとの一方的放送を続けている。国営の「ロシア24」は親露派組織の幹部を番組に出演させるなどし、米欧やウクライナ政府が国際調査団の現場入りを妨げているかのように報じた。撃墜事件に関するウクライナの見解も逐一、ロシアの専門家に欺瞞(ぎまん)だと反論させている。
今回の事件では、多数の欧州出身者が犠牲となり、経済的に対露依存度の高い欧州連合(EU)も、米国と歩調を合わせて追加制裁を発動する可能性が高まっている。プーチン政権としては、ウクライナ東部との国境を閉鎖し、武器や義勇兵の越境を止めることが非難を和らげる唯一の道だ。だが、メディアが武装勢力を「ロシア系住民やロシア語使用者を守護する人々」と報じる中、プーチン政権が同勢力を「見捨てる」のは難しい。政権は責任を可能な限りウクライナになすり付け、国際調査のあり方に疑問を呈しながら時間を稼ぐとの観測が強い。
米欧の制裁議論にもかかわらず、プーチン氏の支持率は86%に上昇。識者らは「周囲は敵だらけ」というソ連時代に似た感覚で国民に結束が生まれているためだとみている。プーチン氏が米欧との対決を辞さずに態度を硬化させ、戦闘が泥沼化する恐れもある。(モスクワ 遠藤良介/SANKEI EXPRESS)