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【ウクライナ情勢】親露派拠点奪還 市街戦拡大の恐れ ウクライナ軍、東部で掃討作戦継続

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【ウクライナ情勢】親露派拠点奪還 市街戦拡大の恐れ ウクライナ軍、東部で掃討作戦継続

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 ウクライナ政府は7月6日、親ロシア派勢力の軍事拠点だった東部ドネツク州スラビャンスクに続き、政府軍がクラマトルスクなど3都市を制圧したと発表した。インタファクス通信が伝えた。これに先立ち、ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領(48)は5日、スラビャンスクの奪還を受けて国民向けに演説し、「テロリストたちは大都市に立て籠もった。私の指令は包囲網を狭め、ドネツク、ルガンスク両州を解放することだ」と語り、掃討作戦が大都市部での市街戦に拡大することも辞さない構えを示した。親露派の部隊は、もう一つの拠点ドネツクの部隊と合流したもようで、和平協議の再開が模索される中、人口約100万人の州都ドネツクで戦闘が激化する恐れがでてきた。

 「反転攻勢の始まり」

 クラマトルスクなど3都市の制圧で、政権側は親露派の軍事的基盤だったドネツク州北部の主要都市をほぼ奪還したことになり、ロシア側からクラマトルスク近郊の空港へ武器や物資を補給することは不可能となった。ドネツク州に隣接するルガンスク州の攻防でも、政権側が優位に立つ要因となる。ウクライナのウニアン通信によると、親露派勢力が占拠していたスラビャンスクの行政庁舎にはウクライナ国旗が掲げられた。

 テレビで演説したポロシェンコ大統領は「まだ完全な勝利ではないが、スラビャンスクの奪還は非常に象徴的で重要な意味を持つ。これは武装集団に対する反転攻勢の始まりだ」と述べた。

 スラビャンスクは今年4月中旬に武装集団が行政庁舎を占拠して以来、抵抗を続けてきた重要拠点の一つ。政府軍の奪還は、親露派勢力にとって大きな後退を意味し、近く再開が見込まれる政権側と親露派勢力側の和平協議にも影響を与える可能性がある。政権側は戦況で優位に立った上で交渉に臨みたい思惑があるようだ。

 戦術的撤退の見方も

 スラビャンスクからの親露派戦闘員の撤退については、ドネツクの親露派勢力幹部もロシアメディアに「武装集団の本部があったスラビャンスクを脱出した」と認めている。その一方で、ロシアメディアによると、武装集団はドネツクやその近郊都市ゴルロフカの武装集団と合流した。このため、武装集団のスラビャンスク撤退は「戦術的」との見方もある。実際、5日にはドネツク郊外の空港やルガンスク州の州都ルガンスク郊外でも政府軍との激しい戦闘があったという。

 インタファクス通信によると、ドネツクでは、戦闘激化を恐れて多くの市民が街から避難し始めた。本格的な市街戦に発展すれば市民に犠牲が広がる恐れがあり、当局は市民に外出しないよう呼びかけている。

 和平協議再開の動き

 政権側と親露派は、再停戦に向けた和平協議再開の調整を平行して進めているもようだ。親露派幹部は5日、インタファクス通信に「東部情勢の正常化に向けた協議は依然として可能だ」と語った。

 双方は先月(5月)、一時停戦で合意したものの、戦闘は続いた。あらためて開く協議では、実効性ある「持続的な停戦」で一致できるかが焦点で、国境管理に関する問題解決が鍵となる。

 政権部隊は4月中旬に親露派武装集団の掃討作戦を始め、大規模な攻撃も実施。だが親露派の抵抗は続き、武器や弾薬も底を突いていない。政権にとって、親露派の補給路とみなす国境の管理を取り戻すことが最優先課題だ。

 双方が再協議に向かったのは、戦況が消耗戦に入っていることも影響しているようだ。政権側の情報では、(7月)4日の戦闘だけで政権部隊の9人が死亡、13人が負傷し、大規模作戦の代償は小さくない。親露派の疲弊はさらに激しい。

 ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相(64)は5日、ドイツのフランクワルター・シュタインマイヤー外相(58)、フランスのローラン・ファビウス外相(67)と相次ぎ電話で協議、ウクライナ政権と親露派に欧州安保協力機構(OSCE)を加えた和平協議の早急な再開が必要だとの認識で一致した。(SANKEI EXPRESS

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