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ウクライナ大統領選 東部3市投票できず 親露派妨害

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ウクライナ大統領選 東部3市投票できず 親露派妨害

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 ウクライナで5月25日、2月の政変でヤヌコビッチ前政権が崩壊したのに伴う繰り上げ大統領選の投票が行われた。政変で実権を握った親欧米派の暫定政権が一定の投票率を確保し、正統性を国内外に示せるかが焦点だ。東部のドネツク、ルガンスク両州では親ロシア派武装勢力による妨害行動が続き、両州の3市で投票が実施されなかった。

 世論調査では、外相なども務めた親欧米派の実業家、ペトロ・ポロシェンコ最高会議議員(48)がユーリヤ・ティモシェンコ元首相(53)ら他候補を大きく引き離している。ポロシェンコ氏が第1回投票で過半数を得票し、決選投票を待たずに勝利を決められるかが注視されている。投票は午後8時(日本時間26日午前2時)に締め切られ、即日開票される。

 ロシアが3月に併合した南部クリミア半島では今回、投票実施が見送られた。また、中央選管によると、東部ドネツク、ルガンスク両州の州都と、ドネツク州スラビャンスクの計3市には投票用紙を届けられず、投票が行われなかった。クリミア半島と東部2州の有権者は全体の約2割を占める。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(61)はここにきて「ウクライナ国民の選択を尊重する」と述べ、選挙結果を容認する構えを見せる。米欧の追加制裁を回避し、クリミア併合の既成事実化を図る思惑とみられる。

 ただ、改憲などによる「東部住民の権利保護」を暫定政権に迫ってきた経緯があり、関係が改善に向かうかはなお不透明だ。

 ≪投票所の大半閉鎖 「すでに表現の自由ない」≫

 混乱が続くウクライナで5月25日、投票が行われた大統領選。親ロシア派のヤヌコビッチ前政権を崩壊させた政変から約3カ月たち、ようやく正式政権への移行を目指すことになる。首都キエフでは、新大統領の下で国情が安定することへの期待の声が上がる一方、親露派勢力が支配する東部では、多くの投票所が閉鎖され、有権者が投票できない事態に陥った。

 「プーチン全て悪い」

 キエフ中心部の投票所には25日、午前8時の投票開始から市民が次々と足を運んだ。女性医師のクラフチュクさん(52)は「実務能力があり、語学にも堪能」と、実業家のポロシェンコ候補に一票を投じた。

 「東部の分離主義はプーチン(露大統領)によって人工的に移植されたものだ。彼が全て悪い」とし、「選挙後には平和が訪れる。東部の良識ある人々もそれを望んでいるはずだ」と話した。

 昨年(2013年)11月以降の大規模デモで拠点となった独立広場(通称マイダン)には今もテント村が残り、東部で中枢施設を占拠する親露派勢力が激しく非難している。だが、市民には「権力を監視するために必要だ」などと容認する意見が多い。

 親欧米派を支持する男性法律家、クドリャフツェフさん(28)は「この選挙で正統な大統領が生まれるということが大事だ」と指摘。「(2月に親露派政権を打倒した)キエフのデモ隊は平和的な市民だったのに対し、東部の分離主義者は機関銃や装甲車を手にしている」とも述べ、武装勢力の支援を疑われるロシアを批判した。

 箱さえなし

 東部ドネツク州とルガンスク州では、それぞれの選管支部の多くが武装集団の襲撃に見舞われ、機能している事務所は4分の1にすぎない。地元メディアによると、ドネツク州の州都ドネツクでは、市内全ての投票所が閉鎖に追い込まれたという。

 ドネツク中心部にある検察庁舎に隣接する大学学生寮。地域の投票所として指定されており、普段なら選挙の2週間前から選管関係者が訪れ、準備に追われるが、25日朝の時点で投票箱さえない。

 寮関係者は「選管からは今日まで何の連絡もない。投票箱が来たとしても、検察庁舎が武装集団に占拠されていて、住民に危険が及ぶために選挙はできないと思う」と話した。

 寮に住むマリアさん(25)は、ウクライナ東部が本土から分離することに反対。「選挙できないことに憤りを感じる。ここではすでに『表現の自由』はない。『政権を支持する』なんて、怖くて他の人には言えない」と語った。

 地元メディアによると、ドネツク中心部の投票所ではこの日、開設してからわずか10分後、覆面姿の武装集団に襲撃され、選管関係者が追い払われた。

 ドネツク州のスラビャンスク周辺では24日夜にも武装集団と軍部隊の間で戦闘が起き、死傷者が出たもようだ。(キエフ 遠藤良介、ドネツク 佐々木正明/SANKEI EXPRESS

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