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「帝国の慰安婦」訴訟 「常識」巣くう韓国社会
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ソウル東部地方裁判所で7月9日開かれた「帝国の慰安婦」訴訟の第1回口頭弁論後、著者の謝罪などを求めて拳を振り上げる元慰安婦ら=2014年、韓国・首都ソウル(聯合) 韓国における慰安婦問題は“反日”も絡み根が深く、一筋縄では行かない。その象徴的な出来事が最近起きた。韓国で昨夏(2013年8月)出版された「帝国の慰安婦」の内容が問題視され、元慰安婦9人が今年6月にソウル東部地裁へ販売差し止めの仮処分を申請し、著者である朴裕河(パク・ユハ)・世宗大教授(57)を名誉毀損(きそん)で提訴した。訴えは元慰安婦たちの自発的意思というより、陰で支援団体が操っているというのが大方の見方だ。
原告側が用意した報道資料によると、「帝国の慰安婦」が元慰安婦らを「売春婦、日本軍の協力者」と描写し、元慰安婦たちは「日本軍の同志であったことを認め、大衆に被害者としてのイメージだけを伝えるべきではない」と主張し、元慰安婦らの名誉を傷つけたとしている。
一方、被告側は本の内容が歪曲(わいきょく)されて受け取られているとして争う姿勢を見せている。今月(7月)9日に開かれた第1回口頭弁論に合わせて、朴氏の知人らが中心となり「『帝国の慰安婦』は研究成果の一つで、学問の領域で議論しなければならない問題であり、法廷で是々非々を争う問題ではない」とする嘆願書の署名集めも行われた。
朴氏は慶応大や早稲田大で学んだ知日家で、慰安婦問題をめぐる論客の一人でもある。「慰安婦は強制連行された日本軍の性奴隷」といった韓国の“常識”を覆す主張を繰り広げ、日本に謝罪や賠償を求めている支援団体「韓国挺身隊問題対策協議会」などが朴氏を警戒してきたことは想像に難くない。
問題となった「帝国の慰安婦」について、韓国の主要紙、朝鮮日報(電子版、7月12日)が韓国のKAIST大教授の書評を掲載している。「慰安婦問題では朝鮮人も責任を避けられない、という指摘は認めざるを得ない。娘や妹を安値で売り渡した父や兄、貧しく純真な女性をだまして遠い異国の戦線に連れて行った業者、業者の違法行為をそそのかした区町村長、そして何よりも、無気力で無能な男性の責任は、いつか必ず問われるべきだ」と朴氏の主張に一部、同調している。
また「本書を細かく読んでみると、韓日間の和解に向けた朴裕河教授の本心に疑う余地はない。元慰安婦を見下したり、冒涜(ぼうとく)したりする意図がなかったことも明白だ」と擁護している。
この訴訟騒動について、米国のリベラル系インターネット新聞、ハフィントン・ポスト韓国版(6月23日)に、木村幹(かん)・神戸大教授(48)が寄稿している。「『帝国の慰安婦』は昨年(2013年)8月に既に出版されたものであり、今の段階で突如販売差し止め請求がなされるのはかなり奇異な感がある。背後には慰安婦運動をめぐる、支援団体と朴裕河間の対立も指摘される」という。
さらに木村氏は「自らと見解が異なるからといって、これを力で抑えつけることで得られるものは何もない。学問的議論は、あくまでも学問の領域に委ねるべきだ」と主張。「司法や社会の“常識”を利用して、ある特定の議論を封殺しようとするのは、慰安婦問題の解決、糾明を妨げるばかりでなく、その運動の信頼性を自ら大きく傷つけているだけだ」と支援団体を批判した。
保守系の韓国紙、東亜日報(電子版、6月17日)は、朴氏が交流サイト(SNS)、フェイスブックを通して反論した内容を伝えている。「支援団体とマスコミが作った“韓国の常識”とは違う意見を言って無事だった人はいなかった。大統領も支援団体の批判を受けて自身の主張を曲げた」と朴氏は指摘している。
次回の口頭弁論は9月17日に予定されている。韓国の司法が“常識”をどう判断するのか、今後の裁判の行方が注目される。(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS)