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高知県北川村「モネの庭」 縁ない土地へ 熱意が花開いた
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印象派の巨匠、クロード・モネは自宅の庭を生きたキャンバスとして造成、その庭の池に浮かぶ睡蓮を描いた連作「睡蓮」は誰もが一度は目にしたことがある絵といえるだろう。多くの名作を生んだフランス北部ジベルニーにある「モネの庭」を再現した高知県北川村の「北川村モネの庭マルモッタン」は、ジベルニー以外で唯一、「モネの庭」を名乗ることを許されている場所だ。
北川村はユズの産地として知られる人口約1400人の小さな村。モネとは縁もゆかりもなかったこの村にモネの庭ができたのは、バブル崩壊で村がユズワインのワイナリー誘致に挫折したことがきっかけだ。跡地利用候補の一つにすぎなかったモネの庭だが、当時、村役場で財政担当兼新規事業プロジェクト主任だった副村長の上村(かみむら)誠さん(52)がフランスに飛び、モネの庭の管理責任者、ジルベール・バエ氏から協力の承諾を得られたことで、実現した。
上村さんは「最初は門前払いで、『他の庭を紹介しましょう』とも言われました」と振り返る。
短い滞在期間だったが、上村さんは時間の許す限りモネの庭を訪れ、隅々まで見て回った。そのうえでバエ氏に「この庭を見て、肌で感じ、本当に感動し、気に入ったからこの庭を日本の北川村で再現したい。協力してほしい」と訴えた。モネが大の日本びいきだったことを思い出したのだろうか。バエ氏は上村さんの話を聞いた後、自ら描き上げたモネの庭の図面を渡し、造成のコツを教えてくれた。
≪巨匠が夢見た青い睡蓮≫
北川村モネの庭マルモッタンは高知龍馬空港から車で約60分。入園料は大人700円、小中学生300円。毎週火曜日(祝日は営業)のほか、年末年始(12月26日~1月1日)および冬季メンテナンス(1月10日~2月末日)期間は休園。チケット半券を持参するとフランス・ジベルニーの庭に無料で入園できる。
北川村はジベルニーの庭から睡蓮の苗を株分けしてもらい、庭を造成し、2000年に開園した。日本の高知の自然の中に再現された「モネの庭」は、歴代のフランス大使が在任中に一度は訪れる場所となっている。
北川村とモネの庭の関係を強固にした立役者の一人に、倉敷芸術科学大学副学長で陶芸家の児島塊太郎さん(67)がいる。大原美術館(岡山県倉敷市)にあるモネの庭の「睡蓮」を買い付けた画家、児島虎次郎の孫で、以前からバエ氏と交流があり、ジベルニーのモネの庭にも何度か訪れていた。
児島さんは「ジベルニーと北川村では緯度が違うので、同じような庭ができるのか、と当初はバエ氏は乗り気でなかった。でも、高台から海が見え、青い睡蓮の池がある日本のモネの庭をとても喜んでいました」と話す。
モネの連作に青い睡蓮を描いた、その名も「青い睡蓮」という絵がある。熱帯睡蓮の青い睡蓮を庭の池で咲かせようとモネは苗を取り寄せたが、フランス北部のジベルニーでは花を咲かせることができず、この絵は想像で描いたと言われている。モネが見ることを夢見ていた青い睡蓮のある池の風景は、日本の北川村でだけ見ることができるのだ。
青い睡蓮は6月下旬から咲き始め、7、8月が見頃。モネのファンならずとも、一度は訪れて、時間の変化で変わる自然の美しさの妙を味わってはどうだろう。(文:文化部 平沢裕子/撮影:倉敷芸術科学大学学長顧問 唐木英明/SANKEI EXPRESS)