SankeiBiz for mobile

仲井真氏、沖縄県知事選出馬を正式表明 「県外移設」の因縁 保守分裂の決断

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの政治

仲井真氏、沖縄県知事選出馬を正式表明 「県外移設」の因縁 保守分裂の決断

更新

沖縄県知事選への出馬会見に臨む仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事=2014年8月7日午後、沖縄県・那覇市内のホテル(共同)  沖縄県の仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事(74)は8月7日、那覇市内で記者会見し、任期満了に伴う県知事選(10月30日告示、11月16日投開票)への3選出馬を正式に表明した。仲井真氏は「産業、雇用、離島振興など沖縄はあらゆる面で活況を呈している。この流れを変えてはならない」と述べた。米軍普天間飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)の5年以内の運用停止は「安倍晋三首相と約束しメドをつけた」とし、これを確実に実現したいと訴えた。

 自民党の石破茂(いしば・しげる)幹事長(57)は7日、仲井真氏を支援する方針を示した。

 知事選は普天間飛行場の名護市辺野古(へのこ)への移設が争点。元自民党県連幹事長ながら辺野古移設反対を唱える翁長雄志(おなが・たけし)那覇市長(63)も出馬の意向を示し、那覇市議や社民、共産両党など県政野党5団体の支援を受ける。下地幹郎(みきお)元郵政民営化担当相(52)も出馬を表明した。

 ≪「県外移設」の因縁 保守分裂の決断≫

 「基地問題を含め、同じ考えを持つ人に巡り合うことができなかった」

 仲井真氏は8月7日の記者会見で後継者に道を譲らず、出馬に至った胸のうちをそう吐露した。普天間飛行場移設問題で翁長氏との決別を宣言したに等しい。

 両氏の激突は、昨年(2013年)12月27日に仲井真氏が普天間飛行場の名護市辺野古への移設で埋め立てを承認した前後に確定していた。

 ルビコン川を渡った翁長氏

 「翁長さんはルビコン川を渡ったんですかね」

 埋め立て承認から約1週間後の今年正月、仲井真氏は面談した知人に漏らした。翁長氏が「ルビコン川を渡る」とは、辺野古反対で社民、共産両党など革新勢力と共闘し、知事選に出馬することを指す。

 実際、翁長氏はすでにルビコン川を渡っていた。

 「一緒にやれないか」。昨年(2013年)11月、自民党県連幹部は翁長氏に何度も直談判した。県連は普天間飛行場の県外移設要求から辺野古容認に転換する大詰めの段階に入っており、翁長氏にも同調を求めた。

 「仲井真さんの後継者は君しかいない」。県連幹部は知事選に触れつつ説得した。翁長氏は承認を「追認」するという線で歩み寄りかけたが、同意には至らなかった。かつて辺野古移設を推進した翁長氏が今回、同意しなかった理由は、仲井真氏との因縁を振り返るとよく分かる。

 2010年の前回知事選。09年に発足した民主党政権の普天間問題での迷走のあおりを受け、県外移設を訴える県民の声が一気に高まった。自民党県連も知事選を前に、県内移設容認から県外移設要求に転じるよう仲井真氏に迫った。

 仲井真氏は「手を縛られたくない」と激しく抵抗したが、引導を渡したのが翁長氏だった。「県外」をのまない限り、選対本部長を引き受けないと伝え、仲井真氏の首を縦に振らせた。

 仲井真氏が再選を果たしたことで、翁長氏は「県外」を訴えないと知事選に勝てないとの思いを強めたという。昨年(2013年)末の埋め立て承認への県民の反発を目の当たりにし、翁長氏のその思いは「確信に変わった」と県連幹部は語る。翁長氏がルビコン川を渡る決意をしたのはこの時だった。

 確かめたい「仕掛品」の行く末

 「もう出ませんよ」。3選出馬の意向を問われても仲井真氏は今年5月までけむに巻いてきた。側近の一人は「相手の反応から出馬への期待感がどの程度かを推し量っていた」と指摘する。旧通産省時代からの友人は1月には3選出馬をすると気づいていた。

 埋め立て承認に伴う逆風の中、なぜ出馬を決断したのか。読み解くキーワードは「仕掛品(しかかりひん)」だ。

 これは仲井真氏が好んで使う言葉で、自身が手がけてきた政策を指す。基地負担軽減に加え、産業振興で沖縄を日本経済活性化のフロントランナーに引き上げることも、仲井真氏が行く末を確かめたい仕掛品だ。

 翁長氏は主張を辺野古反対に絞り、選挙戦を展開する。下地氏は県民投票による普天間問題の決着を掲げるが、どれだけ存在感を示せるか定かでない。

 ≪自民、支援 公明は明言避ける≫

 自民党の石破茂(いしば・しげる)幹事長は8月7日、沖縄県知事選への対応について、国会内で記者団に「仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事の思いを成就するような態勢で臨まなければならない」と述べ、仲井真氏を支援する考えを表明した。その上で「自公態勢で戦うのはすべての選挙の基本だ。そのような態勢が構築されるのが望ましい」と語り、公明党に協力を呼び掛けた。

 一方、公明党の山口那津男(なつお)代表(62)は記者会見で、仲井真氏について「沖縄の振興を推進してきた点では評価する部分がある」としながらも、知事選の対応については「沖縄県本部の意見を聞きながら、自民党本部や首相官邸の意向も忖度(そんたく)しながら対応を考える。国の政策と県民のニーズが調和する候補が望ましい」と明言を避けた。

 民主党の大畠(おおはた)章宏幹事長(66)は記者会見で「沖縄県連と意見交換しながら、適切に対応する」と述べるにとどめた。(SANKEI EXPRESS

ランキング