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エルドアン氏、大統領当選 権限集中へ改憲目指す
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トルコ・イスタンブール トルコで初めての直接選挙による大統領選の投開票が8月10日行われ、選挙管理委員長は10日夜、レジェプ・タイップ・エルドアン首相(60)が過半数を獲得して当選したと発表した。任期は5年。エルドアン氏は、現在は名目的な国家元首である大統領の権限強化に向けた憲法改正を目指している。今後もイスラム系与党・公正発展党(AKP)への影響力を行使しながら、実権を握り続けるものとみられる。
地元メディアによると開票率99%の段階で、エルドアン氏は51.8%を獲得した。
エルドアン氏は10日夜、首都アンカラの集会で「新しい時代が来た。私を大統領に推してくれたすべての人に感謝する」と勝利宣言した。28日に大統領に就任する。
エルドアン氏は選挙戦で、現行憲法で認められている範囲で最大限の権限を行使すると強調し、首相が実権を持つ現在の議院内閣制から大統領を中心とした体制への移行を目指すと明言している。
2003年から首相の座にあるエルドアン氏に対しては、イスタンブールなど都市部を中心に「独裁的だ」との批判がつきまとっており、昨年(2013年)6月には各地で大規模な反政府デモが発生。昨年(2013年)末以降は自身の関与も取り沙汰される汚職スキャンダルに見舞われた。
しかし、イスラム教の価値観重視を前面に押し出すエルドアン氏は、好調な経済を背景に、保守的な地方部での人気を維持。大統領として最長2期10年を務めることで首相時代から20年を超す“超長期政権”を狙っているとみられている。
すでに首相3期目のエルドアン氏は、AKPの内規でこれ以上の首相続投は不可能なことから今回、大統領選にくら替え出馬した。選挙には、主要野党の統一候補としてイスラム協力機構(OIC)のイフサンオウル前事務局長(70)と、クルド人のデミルタシュ氏(41)も立候補したが、得票率はイフサンオウル氏が約36.6%、デミルタシュ氏が9.6%にとどまった。(イスタンブール 大内清/SANKEI EXPRESS)
≪「強いトルコ」復活へ介入外交維持≫
レジェプ・タイップ・エルドアン首相が新大統領に選出されたことで、トルコは、他国の問題に積極的に関与するここ数年の外交スタイルを維持する見通しとなった。一方でトルコ周辺では、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」がイラク政府やクルド自治政府への攻撃を強めるなど不安定さを増しており、国内にクルド人問題を抱えるエルドアン氏は慎重なかじ取りを迫られそうだ。
「新しい、強いトルコの誕生だ」。エルドアン氏は大統領選の投開票に先立つ8月9日、こう述べ、当選後は域内で主導的な役割を担うことに強い意欲を示した。
エルドアン氏は2003年の首相就任後、米欧のみならず中東各国とも良好な関係を保つ「全方位外交」を展開した。しかし、11年に中東各国で反政府行動が拡大した「アラブの春」以降、シリア反体制派を支援して体制転換を図ったり、エジプトのイスラム原理主義組織ムスリム同胞団を後押しするなど、「強いトルコ」復活を目指すエルドアン氏の個性を反映した“介入策”も目立っている。
この結果、トルコは域内外交で存在感を増した半面、シリアやエジプトなどとは関係が険悪になった。これらの国々とはぎくしゃくした関係が続くとみられる。
他方、トルコは近年、イラク北部クルド人自治区への投資を増加させ、関係緊密化を図ってきた。長年対立してきた国内のクルド武装勢力との和解にも意欲を示している。
だが、イラクでは、イスラム国が勢力を急拡大させた6月以降の流動的な情勢を受け、クルド自治政府が「独立」への野心をあらわにし始めている。
今後、クルド独立が現実味を増す事態となれば、トルコ国内のクルド分離独立派を刺激する可能性もあり、エルドアン氏としては事態の推移を見極めていくものとみられる。(イスタンブール 大内清/SANKEI EXPRESS)