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「多崎つくる」熱狂 欧米ファン、書店へ巡礼 英語版発売 独自の世界描き存在感

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「多崎つくる」熱狂 欧米ファン、書店へ巡礼 英語版発売 独自の世界描き存在感

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8月12日、米ニューヨークの書店で発売された「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」の英訳本(手前)を買い求めるファンたち=2014年(共同)  世界的な人気作家、村上春樹さん(65)が昨年(2013年)発表し、日本では100万部以上を売ったベストセラー長編「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」の英訳版が8月12日、英米で発売された。長年、ノーベル文学賞の候補として名前が挙がるだけに、欧米でも高い人気を誇り、熱狂的なファンが開店前の書店に長い列を作った。もともと米国文学に多大な影響を受けた村上さんだが、欧米メディアは、現実と虚構の世界をふわふわ往来し、挑戦的かつ独自の視点を持った唯一無二の存在感が人気の秘密-と分析している。

 過去のどの作家とも異なる

 英紙イブニング・スタンダード(電子版)によると、ロンドンのチャリング・クロスにある有名老舗書店フォイルズには12日夜、熱狂的なファン60人が行列を作った。

 彼のファンが行列を作ったのは当地で2011年に「1Q84」が発売されて以来だが、行列の先頭にいたマーケティング・マネジャー、アレック・メダニーさん(25)は「彼は私が最も好きな作家。全作品を読んだが、過去に読んだどの作家の作品とも異なっている」とその独自性を強調。「日本に行ったことはないが、(作品を読むと)彼が描く登場人物の頭の中に入り込むような気持ちになる」と作品の魅力を説明した。

 また、ニューヨークのマンハッタンにある書店では、発売解禁後の米東部時間12日午前0時に約70人のファンが行列を作り、大急ぎで買っていった。

 この作品は鉄道会社に勤務する主人公、多崎つくるが高校時代の友人4人から知らぬ間に絶縁されていた理由を探す旅に出る物語。英訳版は日本語版とほぼ同じ386ページで25.95ドル(約2600円)。翻訳は日本で2009年に第1巻が発売された「1Q84」の共訳を担当した米アリゾナ大のフィリップ・ガブリエル教授。AP通信によると、村上さんは米出版社のインタビューに「船のデッキから夜、1人で海に放り込まれてしまうような感じ。そんな感情について書きたいと思った」と、執筆の動機を説明した。

 「文学と音楽の仮想交響曲」

 海外では昨今「ねじまき鳥クロニクル」3部作(1994~95年)や「海辺のカフカ」(2002年)などが人気を集めるが、本作については8月11日付米紙ワシントン・ポスト(電子版)が「文学と音楽による仮想交響曲」「村上作品は常に、刺激的で挑戦的で明らかに風変わりな視点が約束されている」と評するなど、欧米各紙が書評で肯定的に紹介した。

 また8月5日付米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、村上作品の大ファンという米大物女性ロッカー、パティ・スミスさん(67)の書評を掲載し、「新刊が告知されたときから祈りの予兆が生じている。過去の世代がビートルズやボブ・ディランの新作を求め、レコード店に行列を作ったように、読者は村上作品を待ちわびている」などと紹介。

 「この新作は村上作品の初心者、そして長年の読者双方のための作品だ。村上自身が書いているように、まるで打ち明け話のような不思議なさりげなさがあり、他のすべての作品の前編であるかのように思える」と説明し、「容易に捉えられない村上の違った一面を明らかにしており、彼が脱皮したといえる」と称賛した。

 「過去は私の宝箱であり、それを開けば(小説執筆のための)多くの素材が眠っている」。村上さんはAP通信にこう語り、次回作への意欲をにじませた。(SANKEI EXPRESS

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