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中国、独禁法違反で日系10社に制裁金205億円 「外資たたき」まず自動車で試す

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中国、独禁法違反で日系10社に制裁金205億円 「外資たたき」まず自動車で試す

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日本企業10社の罰金額(※1元=16.772409円で換算、億円未満は切り捨て)=※中国国家発展改革委員会(発改委)は2014年8月20日、日本の自動車部品メーカー12社に対して独占禁止法違反を認定し、うち10社に総額12億3540万元(約205億円)に及ぶ制裁金を課すことを決めた。  中国国家発展改革委員会(発改委)は8月20日、日本の自動車部品メーカー12社に対して独占禁止法違反を認定し、うち10社に総額12億3540万元(約205億円)に及ぶ制裁金を科すことを決めた。2000年から10年以上にわたり価格カルテルを結ぶなどして完成車価格を押し上げ、中国の消費者の利益を損なったと判断した。中国中央テレビは、中国で独禁法が08年に施行されて以来、制裁規模としては過去最大の事案になるとしている。

 違反行為を認定されたのはデンソー、三菱電機、住友電気工業、矢崎総業、日本精工、日立オートモティブシステムズ、不二越、古河電気工業、愛三工業、ジェイテクト、NTN、ミツバの12社。調査への協力度合いなどを勘案し、制裁金の料率は昨年の中国市場における売上高に対し4~8%まで区分された。日立オートと不二越の2社は調査に協力したとして制裁金を免除された。

 12社はワイヤーハーネスなどの電装部品、ベアリングなどの機械部品の販売で密接に連携し、長年にわたって価格カルテルを結んでいたと発改委は認定した。

 中国では日米欧など外国ブランド車の価格やアフターサービスの補修部品の価格が、国産車に比べて高いと批判されており、国内メーカーなどの告発を受けて発改委が調査していた。日系に加え、同時に欧米系メーカーもやり玉に挙がっている。中国政府には消費者保護の姿勢をアピールする狙いがあるとみられる。(上海 河崎真澄/SANKEI EXPRESS

 ≪「外資たたき」まず自動車で試す≫

 中国当局から独占禁止法違反による制裁金の支払い命令を受け、日本の自動車部品メーカー12社は「再発防止に万全を期す」(デンソー)など謝罪のコメントを相次いで発表した。法令順守の徹底は急務。ただ、中国当局は外資系企業に対して、独占禁止法違反での調査を強化しており、「外資たたき」との見方もある。自動車メーカーを含むより大規模な事案に発展すれば、各社の対中戦略に影響を及ぼす可能性もある。

 シェア60%にいらだち

 中国政府は自動車をめぐる独占禁止法違反の事案で、日本企業12社以外にも、欧米系フィアット・クライスラーの「クライスラー」など欧米メーカーも制裁している。

 昨年(2013年)1年間で2198万台の新車が販売された世界最大の自動車市場を抱える中国。だが、このうち乗用車1793万台の60%近いシェアは日米欧など外国ブランド車で占められた。中国の国産メーカー車は安価な大衆車が大半だった。

 このため、依然として中国メーカーが存在感を確立できていないことに習近平政権はいらだちを感じており、業界関係者は「独禁法と倹約令で外国ブランド高級車への“外資たたき”を行い、国産メーカーを保護している」とみる。

 尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐる日中関係の悪化で落ち込んだ日本メーカーの中国での販売は回復してきたが、自動車大手幹部は今回の摘発で「中国の政治リスクを再認識させられた」と話す。

 抵抗勢力と権力闘争も

 一方、今回の命令をめぐっては、習政権の思惑ものぞく。「独禁法を振りかざして、まず自動車業界でどこまで切り崩せるか試し、習政権は今後、石油や電力、通信など既得権益層が抵抗勢力となっている独占業界との権力闘争に挑むのではないか」と上海の有識者は話している。

 独禁法施行から6年と経験の浅い中国。欧米事案も参考にしながら、外資たたきで消費者の“留飲”を下げて実績を作りつつ、国有企業による市場寡占や価格決定プロセスの不透明さが続く“本丸”の業界に「改革」と称し、集権を狙う習政権が切り込む権力闘争シナリオも見え隠れする。

 習政権は昨年(2013年)秋の中国共産党の重要会議、第18期中央委員会第3回総会(3中総会)で「独占と不正競争に反対する」との方針を決定済み。7月末には最高指導部元メンバーで、石油閥のトップだった周永康・前党中央政法委員会書記の汚職事件の立件を公表。独占体質の石油業界解体が今後の注目点となっている。

 そもそも「独占市場だらけ」の中国。消費者保護を口実に独禁法が政治の道具ともなれば、市場経済が混乱に陥る恐れもある。(田辺裕晶、上海=河崎真澄/SANKEI EXPRESS

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