SankeiBiz for mobile

ハマスが狙うイスラム国との連携

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの国際

ハマスが狙うイスラム国との連携

更新

イスラエル・パレスチナ自治区ガザ地区ガザ市  【佐藤優の地球を斬る】

 イスラエル政府とパレスチナ自治政府のガザ地区を実効支配するイスラーム教スンニー派原理主義過激派ハマスとの間に無期限停戦協定が成立した。「約束はしたが、それを守るとは約束しなかった」というのがハマスの常套(じょうとう)手段だ。ハマスが停戦に応じたのは、このままイスラエルとの戦争を続けると幹部が皆殺しにされると恐れたからだ。特に、8月21日にイスラエル軍がガザ地区南部を空爆し、幹部3人を殺害したことで、ハマスは震え上がった。パレスチナの一般住民を「人間の盾」にして、聖戦(ジハード)を訴えるハマス幹部が、自己保身しか考えない小心者であることが、可視化された意味は大きい。

 体面優先の勝利宣言

 しかし、ハマスは今回の戦争に「勝利」したと虚勢を張っている。その理由について産経新聞カイロ支局の大内清支局長はこう記している。

 <ハマスはイスラエルの作戦で秘密トンネル網だけでなく多数の軍事部門幹部を失い、軍事力の要であるロケット弾の保有数も大きく減らした。

 にもかかわらず、ハマスがイスラエルへの「勝利」を宣言しているのは、体面を失って弱体化すれば求心力を失う恐れがあるためだ。

 今後の協議では、エジプトとガザを結ぶラファハ検問所の通行を緩和する条件として、ハマスとライバル関係にあるパレスチナ自治政府主流派ファタハの治安部隊が同検問所を監視下に置くことなども検討されるとみられている。

 その場合、2007年の軍事制圧以降、ハマスが保ってきたガザ支配が揺らぐ可能性もあり、和解協議が進むファタハとの力関係への影響も避けられない。ハマスにとっては、むしろこれからがガザの「統治者」としての正念場となる>(8月27日のMSN産経ニュース

 ガザ地区をファタハが実効支配するようになれば、イスラエルとパレスチナの現実的な和平交渉が可能になる。このような状況をいかなる対価を支払ってもハマスは阻止することを考えるであろう。ハマスにとって頼みの綱は、スンニー派の原理主義過激派「イスラーム国」(IS)が、イラクとシリアで影響力を拡大していることだ。

 目的はカリフ帝国建設

 ISはシリア人、イラク人、クルド人などの民族に価値を認めない。アッラー(神)は唯一なので、それに対応して地上は、神の法(シャリーア)が支配する単一のカリフ帝国のみが存在すべきであると考える。そしてカリフ(皇帝)が独裁的にカリフ帝国を支配する。ISは、既存の国際法秩序や国連の破壊を目的とする破壊主義者である。

 現時点で、ハマスはパレスチナ民族の解放者を装っている。しかし、ハマスの目的はISと同じくカリフ帝国を建設することだ。原理主義に賛同しないパレスチナ人を殺害することをハマスは躊躇(ちゅうちょ)しない。パレスチナ人が民族として生き残るためにも、ハマスを排除する必要がある。パレスチナ自治政府が虚心坦懐(たんかい)にイスラエル政府と話し合えば、両国が平和的に共存する方策が必ず見つかる。

 ハマスは、これからヨルダンに在住するパレスチナ系住民に対する働きかけを強めると思う。現在のヨルダン王室はイスラエルと良好な関係を維持している。ヨルダン王室はイスラエルの手先であるという煽動(せんどう)工作を強化して、王制の転覆を図ると思う。ヨルダンの王制が転覆すれば、サウジアラビア、アラブ首長国連邦など湾岸の王制が動揺する。その機会に乗じて、ハマスはISと提携して、中東に世界イスラーム革命を輸出する拠点国家を建設しようとする。ハマスやISは、中東における撹乱(かくらん)要因で国際秩序の破壊者だ。今回のイスラエルとの無期停戦をハマスが悪用して、国境を越えたテロ活動に従事することを防ぐべく国際社会は監視の目を強めなくてはならない。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS

ランキング