ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
国際
スコットランド 18日に独立住民投票 英首相「離婚すれば後戻りできず」
更新
英スコットランド・主要都市。英連合王国はイングランド、スコットランド、ウェールズから成るグレートブリテンと北アイルランドで構成。スコットランドは1707年にイングランドと合併したが、スコットランド出身のトニー・ブレア政権時代の1997年に国民投票が行われ、議会が復活し、独立運動が活発化した。 英北部スコットランドの独立を問う住民投票を3日後に控えた15日、デービッド・キャメロン英首相(47)は独立派が掌握を狙う北海油田の開発拠点であるアバディーンを訪れ、「英国という一つの家族を引き裂かないでほしい」と訴えた。独立派は資源による「豊かな歳入」を期待するが、石油業界からは統一維持を望む声が上がっている。
北海油田は、1970年代にスコットランド沖で発見された大規模油田で、英国の石油はほとんどそこから来ている。埋蔵量は依然豊富とされ、独立派はその石油など資源収入を独占することで、英国や日本などを追い抜く「スコットランド経済の奇跡」を起こしたい考えだ。英メディアによると独立の場合、石油は歳入の10~20%を占める可能性があるという。
キャメロン氏は、スコットランドの独立を「苦痛を伴う離婚だ」と述べ、「ともに創り上げた英国という素晴らしい家に背を向けないでほしい。離婚すれば後戻りはできない」と強調した。だが、英首相の“最後のお願い”に、独立を目指すスコットランド行政府のアレックス・サモンド首相は、北海石油はスコットランドのものだと述べ、「脅しには乗らない」と一蹴した。
投票前の独立引き留めに向けた動きが活発化するなか、投票への不介入の姿勢を示していたエリザベス英女王(88)も14日、スコットランドの人々が「将来のことを慎重に考えるよう望んでいる」と異例のコメント。スコットランドのバルモラル城近くの教会で日曜の礼拝に出席した後、集まった市民と言葉を交わす中で発言した。
女王は、75年にアバディーンで行われた北海油田初の石油パイプラインの開通式にも出席、「英国の富」の増大を祝っていた。
英石油大手BPのダドリー最高経営責任者(CEO)は「産油量が減っている北海石油の開発には、財政面の安定性と確実性が必要だ」と強調し、北海石油産業の将来には「英国の統一性と制度を維持するのが最も望ましい」と述べた。(エディンバラ 内藤泰朗/SANKEI EXPRESS)
≪住民の意見軽視、英政府主導に反感≫
英北部スコットランドの独立の是非を問う住民投票が18日実施される。世論調査では独立賛成派と反対派の接戦だ。独立を目指す根底に、英政府主導の政治ではスコットランド住民の意見が軽視されているという根強い反感や不公平感がある。
Q スコットランドって?
A 英首都ロンドンがある南部イングランドなどと「大ブリテンおよび北アイルランド連合王国」を構成している。1707年にイングランドと統合するまで独立国だった。格子柄のタータンチェックや民族楽器バグパイプなどケルト系の独自文化で知られているよ。
Q 昔から独立志向が強かったの?
A 歴史的経緯や文化的な相違などから伝統的にイングランドに強い対抗意識を持っていた。20世紀後半、スコットランド沖の北海油田の開発が進み、独立機運に拍車が掛かったともいわれる。2011年のスコットランド議会選で、独立を掲げる地方政党スコットランド民族党(SNP)が過半数の議席を得た。英政府と交渉し、独立を問う住民投票を実施することで12年に合意した。
Q 独立して文化を守りたいってこと?
A 「スコットランド人の誇りを守りたい」という民族主義的な側面もある。ただ英紙の世論調査によると、独立に賛成する人々は「英政府主導の政治に嫌気が差した」を最大の理由に挙げる。
Q 何が嫌なの?
A スコットランドにある英軍基地に核兵器が配備されていることや、緊縮財政で福祉関係予算が削られていること。サッチャー政権時代に不人気な「人頭税」が先行導入されたことや、多数の反対にもかかわらず英国が参戦したイラク戦争も「英政府の政策と自分たちが求めるものは違う」という不満が強まる契機となったとされている。
Q 分権が既に進んでいるって聞いたけど?
A ブレア政権時代の地方分権改革で、スコットランドに幅広い立法権が認められたのは確かだ。でも、外交や軍事、財政といった基幹分野については除外されている。スコットランド行政府は基幹分野でも「自分たちで政策を決めることのできる社会をつくろう」と呼び掛け、独立して富の再分配の自由を獲得すれば暮らし向きは現在よりも良くなると訴えている。独立機運の盛り上がりは、民族主義の枠を超えたこうした呼び掛けが、移民を含め「変化」を求める幅広い住民の共感を得た結果だといえるね。(共同/SANKEI EXPRESS)