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「広い年代層に見てもらう」キャスティング 舞台「小指の思い出」演出 藤田貴大さんインタビュー

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「広い年代層に見てもらう」キャスティング 舞台「小指の思い出」演出 藤田貴大さんインタビュー

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「来年は30歳。30代をしっかり迎えられるように、いろいろなものを吸収したい」と話す藤田貴大(たかひろ)さん=2014年9月9日、東京都中央区の水天宮ピット(野村成次撮影)  「僕たちの世代にも見てもらえる劇にしたい」。若手の演出家として、めざましい躍進を見せている藤田貴大(たかひろ、29)は、29日から始まる「小指の思い出」の目標について、言葉を選んだ。

 野田秀樹(58)が戯曲を書いた「小指の思い出」は1983年、「夢の遊眠社」で上演された。1960年代のヒット曲「小指の思い出」や映画俳優の名前「赤木圭一郎」を織り込み、当時、社会問題化した、走る車に故意にぶつかって運転者から金をゆすり取る「当たり屋」を題材にしている。舞台ではそれに、魔女狩りが行われていた中世のニュルンベルクの物語が交錯し、現実と妄想の世界が展開する。

 わが子を車に当てて死なせてしまう「女当たり屋」の母親と、死んだ子の生まれ変わり(妄想)を野田自身が演じた。それを今回は飴屋法水(あめや・のりみず)(53)と青柳いづみが演じ分け、主役の若い当たり屋には勝地涼(かつぢ・りょう、28)を当てた。

 当たり屋という題材について藤田は「リアルタイムのトピックではないが、母親の“母性のねじれ”というテーマは、いまの日本にも通じる。子供を虐待する母親は、子供を愛していないのか。そうした母性に焦点を当てたい」と話す。野田がこの戯曲を書いたのは、自分と同じ年代の28歳。1つの「青春劇」として捉える面もある。

 飴屋の「破壊力」に期待

 舞台関係者とミーティングを重ね、「広い年代層に見てもらおう」と悩んだキャスティング。ベテランの飴屋と松重豊(51)を起用したのも、そのねらいだが、飴屋起用の理由には、既存の価値観をこわしてきた「破壊力」を挙げる。

 飴屋は唐十郎(74)の「状況劇場」などで前衛的な舞台活動を展開する一方、美術でも肉体にこだわった輸血や人工授精などを題材にした作品を発表し、いつも常識を打ち砕いてきた。「飴屋さんはいつも、虚構ではなく、ドキュメントしている」と、今回の舞台でもやってくれそうな“荒業”に期待する。

 一瞬一瞬消えてしまう演劇という芸術だが、「だからこそ、足を運ばせ、立ち会わせ、生身の人間が目の前で動いている姿を目撃させる。それだけの魅力がないといけない」。演じる側も観客も、人生の同じ時間を共有できるという演劇の力を信じている。

 同じ場面を繰り返すリフレインという手法を編み出して注目されてきた。今回も盛り込むつもりだが、「僕たちは稽古でも公演でも同じことを繰り返す。だから、舞台は反復芸術。感動や理解を助長、増幅させるリフレインなんです」と、単なる繰り返しとの違いを解く。

 そのリフレインというスタイルで、すでに定評を勝ち得ているが、「とにかく向上心は忘れたくない。来年は30歳。30代をしっかり迎えられるように、いろいろなものを吸収したい」。

 最近、漫画家とのコラボレーションや短編小説の発表など、演劇だけの枠にとどまらない活動が目立つ。さまざまなジャンルを巻き込んでの「フジタワールド」は、まだまだ翼を広げそうだ。(文:原圭介/撮影:野村成次/SANKEI EXPRESS

 ■ふじた・たかひろ 1985年4月27日生まれ、北海道伊達市出身。劇団「マームとジプシー」主宰・劇作家・演出家。桜美林大在学中の2007年にマームとジプシーを立ち上げ、作品の演出を担当。12年、「かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。」で第56回岸田國士戯曲賞を26歳で受賞。

 【ガイド】

 9月29日~10月13日、東京芸術劇場プレイハウス(東京都豊島区西池袋1の8の1)。チケット(電)0570・010・296(劇場ボックスオフィス)

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