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【まぜこぜエクスプレス】Vol.25 街の中からHIV啓発 新宿2丁目発 コミュニティーセンター「akta」

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【まぜこぜエクスプレス】Vol.25 街の中からHIV啓発 新宿2丁目発 コミュニティーセンター「akta」

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登録制のボランティアが新宿2丁目の店にコンドームを配達する「デリバリーボーイズ」と、飛び入り参加の一般社団法人「Get_in_touch」理事長の東ちづる(左)。今後、活動のためのクラウドファンディングを予定=2014年9月5日、東京都新宿区(山下元気さん撮影)  300軒以上の飲食店などが軒を連ねるアジア最大のゲイタウン、東京・新宿2丁目で、HIVやエイズに関する情報を発信しているコミュニティーセンター「akta」。気軽に立ち寄って、待ち合わせや休憩にも利用できるフリースペースでもある。そのユニークな活動を取材した。

 感染者は減ってない

 aktaの勉強会に参加したのは昨年の冬だった。「ゲイの皆さんの集いにおじゃまする」と漠然と考えていたら、全く違って、いろいろなセクシャリティーの人がいた。大学教授や官庁の人も参加しており、肩書や関わり方もさまざまだった。深刻なテーマを分かりやすく説明し、忌憚(きたん)ない意見を出し合う。和気藹々(あいあい)とした勉強会で、正直驚いた。

 「コミュニティーセンター」とは何なのか? スタッフの佐久間久弘さんによると、HIV感染が広がった欧米で、ゲイの当事者たちが予防法や検査ができる場所といった必要な情報を提供するため立ち上げた活動だそうだ。

 「日本では厚生労働省が伝えたいと思っても、どこにゲイの人たちがいるのかわからないし、届ける方法もわからない」。そこで、当事者や研究者が中心となり厚労省とともに、2003年に東京で「akta」を、大阪でも「dista」を立ち上げた。現在は全国6カ所でコミュニティーセンターが運営されている。

 aktaのメンバーでHIV予防についての調査・研究も行っている岩橋恒太さんは、「日本で新たに報告されるHIV感染者は年間1500人以上で、減っていない。そのうち66%の人たちが男性同士の性的接触で感染している」と、厳しい状況を指摘する。特に、若い世代で感染が増えているという。「性教育に対するバッシングもあり、必要な情報が十分に伝わっていない」と岩橋さん。

 「すべての人がすでにHIVとともに生きている」という視点にドキリとさせられるが、もっともな話なのだ。この国のあまり知られていない現実…。佐久間さんは「表現を工夫しながら、必要な情報を必要な人に届けていくことが大事」と語る。

 スタイリッシュに啓発

 aktaの活動は、とってもユニーク。たとえば、首都圏のゲイスポットやHIV検査情報を掲載した小冊子『ヤローページ』。日本を含む多くの国で発行されている“イエローページ”風で、面白ネタもたっぷり。「普段、HIVを意識しない人にも手に取ってほしい」と、akta代表の荒木順子さんは言う。全国どこからでもアクセスできるよう日本中の相談先などをまとめたウエブサイト「HIVマップ」でも情報発信を行っている。こうしたプロジェクトは、HIV陽性者やその周囲の人たちへの支援団体とのコラボレーションで行っているという。

 12年からは「Safer Sexキャンペーン」として、ハッと目を引くエロかっこいいポスターで普及啓発に取り組んでいる。男性同士の場合、避妊の必要がないためコンドームをつけないという人が多く、HIV感染のリスクを高めている。

 「コンドームつける人はかっこいいみたいな感じでムーブメントとなり、若者カルチャーに浸透していけばいい」と、佐久間さんは考える。そのために必要なものを届ける「デリバリーヘルスプロジェクト」も進めてきた。

 そのなかのひとつ「デリバリーボーイズ」は、毎週金曜日にボランティアがおそろいのキュートなつなぎを着て、新宿2丁目のゲイ関連の飲食店などに無料のコンドームを届ける活動だ。「コンドームがあたりまえのようにある環境づくりを目的にしている」と、リーダーの木南拓也さん。カラフルでおしゃれなコンドームは100種類以上。「最初のころは、盛り下がってしまうからやめてくれというお店もあった」というが、10年間で信頼関係が築かれ、情報交換ができるようになった。現在は150軒を超える店舗に配っているという。「aktaを知っている人はコンドームの使用率や購入率が高い」というデータが、その成果を物語っている。

 コミュニティーの中から人へ。そしてコミュニティーを取り巻く社会へと、HIVやエイズへの理解がジワジワと伝わっていると感じた。

 多様なセクシャリティー、多様なセクシュアルヘルス(性の健康)について当たり前のように知ることができる社会が、偏見や差別のない、誰もが自分らしく暮らせる社会なのではないだろうか。(女優、一般社団法人「Get in touch」理事長 東ちづる/SANKEI EXPRESS

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