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【まぜこぜエクスプレス】Vol.22 生き抜くため、ありのまま告白 「なかったことにしたくない」発刊、東小雪さん

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【まぜこぜエクスプレス】Vol.22 生き抜くため、ありのまま告白 「なかったことにしたくない」発刊、東小雪さん

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LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)支援活動に取り組み、これまでに3冊の本を出版した東小雪さん(左)と、一般社団法人「Get_in_touch」理事長の東ちづる=2014年8月13日(山下元気さん撮影)  東小雪さんは2010年にレズビアンであることと、宝塚歌劇団花組に「あうら真輝」の芸名で所属していた経歴を告白し、「LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)」支援活動を始めた。12年にLGBTコミュニティーと一般社会との架け橋を築いた人や団体を表彰する「Tokyo Super Star Awards(TSSA)」をパートナーの増原裕子さんとともに受賞。13年には東京ディズニーリゾートで結婚式を挙げ話題に。そんな小雪さんが、生き抜くサバイバーとしての自身の体験をつづった『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』(講談社、1200円+税)を発刊した。

 書くことで自らを癒やす

 小雪さんは取材の場所に、さっそうと現れた。彼女のこんなすがすがしい笑顔を見るのは初めてだ。自分の体験を執筆したことが、セルフヒーリングにもなったのではないだろうか。

 最初に出合ったのは、昨年の「TSSA」授与式。司会をしていた彼女は笑顔だが、なにか陰りがあると感じた。けれどもデリケートなことだろうからと、あえて聞くことはしなかった。

 その後、彼女の3冊目となる最新刊『なかったことにしたくない』を読んで、重いベールの内を知ることになったのだ。

 先に刊行された『レズビアン的結婚生活』(増原裕子さんと共著)は、それぞれの思春期、周囲との軋轢(あつれき)と孤独、そして運命の出会いから試練を乗り越えてのプロポーズを経て、TDR史上初の同性婚挙式に至るまでの軌跡がビビッドに描かれたコミックエッセーだ。2冊目の『ふたりのママからきみたちへ』では、子供を迎える準備を始めた2人が、素朴な疑問から普遍的なテーマまで、Q&A方式でつづった。

 ところが、最新刊は決してサクサク読み進められる本ではない。性虐待、タカラジェンヌ時代のパワハラ、レズビアンとしての生活。自分の体験を「なかったことにしたくない」との思いからありのままに告白する。

 パートナーの力

 小雪さんは宝塚を退団して以来、強烈な不安にさいなまれてきたという。壮絶な苦悩、葛藤は、オーバードーズ(過剰摂取)やリストカットという自傷行為を引き起こし、ますます自分で自分の評価を下げていく…。「記憶が意識から乖離していたので、不安がどこからくるのか気づけなかった」という彼女は10年以上、いくつもの精神科や心療内科を渡り歩いてきた。

 しかし、症状に対処してもらえても、何が彼女を追い詰めているのかを知る機会はなかったという。そんな彼女を救ったのは、一人のカウンセラーだった。「性虐待を受けたことがあるんじゃないの?」と聞かれて初めて、彼女は自分が封じ込めていた「実父からの性虐待」という過去に向き合うようになった。「言語化していく過程でフラッシュバックも起きた。家族とのいい思い出もたくさんあるので、とても苦しかった。混乱しました」

 実名で実父からの性虐待を語った本は、日本で初めてなのだという。「自分はダメな、汚らわしい存在だと思っていた」と言う彼女。「同じ体験をしている人に、被害を受けたあなたが悪いんじゃない、と伝えていきたい」と語る。

 もがきながら、あえぎながら、それでもサバイバーとして生き抜くことができたのは、パートナーの力も大きい。

 「暴力とは遠い環境で暮らしてきた」という裕子さんには、小雪さんをしっかり受け止める強さがある。それでも、小雪さんが過去と向き合うプロセスは安易なものではなかった。さすがの裕子さんも、「何度も受け止めきれないと思った」と、おちゃめに笑う。小雪さんは、「変わっていくのは怖かったけど、裕子さんがいてくれて、今はよかったと思える」と話す。

 マイノリティーの人の体験、闘い、乗り越えた苦難という話を超えている。この本をだしたことで、新たな困難が起るかもしれない。だが、今の小雪さんはそんなことも承知のうえなのだろう。自分の人生を取り戻すため、果敢に生き抜く覚悟ができている。もう一人ではないのだから。(女優、一般社団法人「Get in touch」理事長 東ちづる/撮影:フォトグラファー 山下元気/SANKEI EXPRESS

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