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村上春樹さん「壁と闘う香港の若者たち」応援 独文学賞受賞 ベルリンでスピーチ
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11月7日夜、首都ベルリンでウェルト文学賞授賞式に出席した村上春樹さん=2014年、ドイツ(広津孝平氏撮影・共同) 作家の村上春樹さん(65)が7日、ドイツ紙ウェルトが選ぶ「ウェルト文学賞」を受賞し、ベルリンで開かれた授賞式に出席した。村上さんは受賞スピーチで、ベルリンの壁の崩壊から9日で25年を迎えることに触れ、「今も世界には民族、宗教、不寛容といった多くの壁がある」と語り、壁のない自由な世界を目指す努力の大切さを訴えた。その上で、「今、壁と闘っている香港の若者たちにこのメッセージを送りたい」と話し、民主的な選挙の実現を求める香港のデモを応援した。
「小説家の私にとって、壁は常に重要なモチーフ」「小説家にとって突き破らなければならない障害」
会場にはドイツにも大勢いる熱狂的な“ハルキスト”らが詰めかけ約200席は全て埋まり、立ち見も出るほど。村上さんは、身ぶり手ぶりとユーモアも交えて英語でスピーチした。
東西分断時代に初めてベルリンを旅行したという村上さんは、壁が崩壊したときのことを「ほっとした」と振り返った。しかし、中東の戦火やバルカン半島での戦争、米中枢同時テロで、「幸せな世界への私たちの希望は崩れた」という。
壁について、村上さんは人々や異なる価値観を隔てる「象徴」と位置づけ、「私たちを守ることもあるが、守るためには他者を排除しなければならない」とし、ベルリンの壁は「その典型だった」と語った。
世界にはなお多くの壁が存在するとする一方で、「小説を書くとき、現実と非現実、意識と無意識を分ける壁を抜ける」「人がフィクションを読んで深く感動し興奮するとき、作者と一緒にその壁を突破したといえる」と語り、今後もそうした“物語”を書き続けたいと意欲を示した。
さらに、「ジョン・レノンが歌ったように、誰もが想像する力を持っている」と、名曲「イマジン」について触れ、「より良い、より自由な世界の物語を語り続ける努力をすること。壁に取り囲まれているときでも、壁のない世界について語ることはできる」と訴えた。
最後に村上さんは、「2014年のベルリンは、そうした力についてもう一度考えるのに最適の場所」とした上で、香港で民主化デモに参加している学生らにエールを送り、スピーチを締めくくった。
ウェルト文学賞はドイツ大手紙が1999年に創設。これまで米国のフィリップ・ロスさんやイスラエルのアモス・オズさんら世界的な作家が受賞し、日本人では村上さんが初めて。村上さんは2006年にチェコの「フランツ・カフカ賞」、09年にイスラエルの「エルサレム賞」を受賞しており、毎年、ノーベル文学賞の有力候補として名前が挙がっている。日本ではほとんど公の場に姿を見せず、自らを「絶滅危惧種」と評したことも。(SANKEI EXPRESS)