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【米中首脳会議】温室ガス削減合意、香港デモで応酬
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米中首脳会談のポイント=2014年11月12日、中国・首都北京市 バラク・オバマ米大統領(53)は12日、北京の人民大会堂で中国の習近平国家主席(61)と会談した。会談後の共同記者会見で、両首脳は温室効果ガスの新たな削減目標をはじめ、偶発的な軍事衝突を避ける米中両軍の「相互連絡システム」でも合意したことを明らかにした。ただ、アジア地域の安全保障への見方や、「強制排除」の観測が流れる香港の民主化デモなどで、米中の対立が残る結果となった。
米中双方は、温室効果ガスの削減に関する共同声明を発表した。それによると、米国は温室効果ガスの排出量を2025年までに26~28%(05年比)削減する。排出量で世界最大の中国は、30年を目処に二酸化炭素(CO2)の排出量を増加から減少に向かわせるとしている。
また、米中の国防当局が両軍間の「相互連絡システム」構築と、公海上での空海軍安全行動規範で合意文書を交わしたことも明らかにされた。
ジョン・ケリー国務長官(70)や楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に、。よう・けつち)国務委員(外交担当)(64)を通じた事前協議で、双方は温室効果ガスの排出規制など地球規模の問題をはじめ、北朝鮮の核開発問題など地域安保の懸念について、首脳間の討議を進めたいとしていた。
アジアの地域安保については、習氏が中国の主張する域内諸国による安保メカニズムの構築を強調したのに対し、オバマ氏は東、南シナ海での「航行の自由」を指摘して、中国の海洋進出を強く牽制した。また、安倍晋三首相と習氏の会談が実現したことを緊張緩和に向けた動きだとして、「歓迎する」と語った。
香港での民主化デモは、「違法行為だ」として外国の介入を拒む習氏と、民意に沿った選挙制度などを求めるオバマ氏の間で、立場の違いが鮮明になった。香港では、警察が一両日にも学生らの強制排除に踏み切るとの観測が出ている。(北京 山本秀也/SANKEI EXPRESS)
≪大国関係変貌 協調演出も利害錯綜≫
オバマ氏と習氏の会談は、国交正常化から35年を迎えた米中関係の変貌を映し出すものとなった。旧ソ連を「共通の敵」として手を結んだ米中は、世界の二大経済大国として地域や国際問題で「共通の利益」を求める一方、安全保障や民主、人権などの原則問題で対立するなど、利害の錯綜(さくそう)を深めつつある。
米中首脳の会談は、習近平政権の発足以来、今回で3度目。11日夜に北京の中南海で行われた会談では、習氏が「(君子は)和して同ぜず」という論語の一節を引用し、対立を残した状態でも、米中両国が「新型大国関係」を構築できるとの持論を展開していた。
12日の共同記者会見で、両首脳は気候変動問題をはじめ、大国として共通の利益にかかわる問題で協調の成果をみせた。気候変動問題は、オバマ政権の発足当初から中国に協力を求めていただけに、オバマ氏は「歴史的な合意だ」と成果を誇示した。
だが、中国中心の地域秩序をアジアで構築することを狙う習氏は、「太平洋は中米両国の発展を収められるほど大きい」などとして、米国が最大の影響力を持つアジア太平洋の安定に中国の関与を要求。中国中心の経済秩序を構築する核であるアジアインフラ投資銀行(AIIB)にも言及するなど、米国への対抗姿勢を強く示した。
米中の対立が最も鮮明に示されたのが、香港で続く民主化デモをめぐる応酬だ。
会見で習氏は、中国の人権状況で「巨大な成果が出ている」と米国の批判を突っぱねたのに続き、香港での道路占拠を「違法行為であり、香港政府が法に沿って処置し、社会の安定を守ることを支持する」と言明した。
これには、オバマ氏も反論し、「米国がデモをあおっている」との中国側で根強い疑惑について、「何ら関与していない」と一蹴。さらに、香港での選挙改革は民意を反映したものであるべきだとして、「市民が見解を表明する権利について、われわれは表明を続ける」と語った。
今回の会談は、米国経済が回復基調に入った半面、オバマ政権与党の民主党が中間選挙で大敗した直後という複雑な米国情勢を背景に行われた。
対する中国は、習氏が汚職摘発を武器に強権を掌握。中国経済の下降傾向が見えているものの、巨額の外貨準備高など豊富な資金と軍事力を武器になお強気の構えを崩していない。
香港のデモに関しては、「大統領は香港での民主主義の価値を表明すべきだ」(米ブルッキングス研究所北東アジア研究所のリチャード・ブッシュ所長)など、党派を問わず米国内で関心が高まっていた。
オバマ政権の弱腰を批判してきた共和党が来年から上下両院を掌握するなか、香港のデモで強権発動を辞さない中国側に明確な反論ができなければ、帰国後にオバマ氏への批判が高まることは避けられない。(北京 山本秀也/SANKEI EXPRESS)