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習氏専用機の象牙密輸疑惑 権力闘争の影も

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習氏専用機の象牙密輸疑惑 権力闘争の影も

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 【国際情勢分析】

 中国の習近平国家主席(61)がアフリカ・タンザニアを公式訪問した際、習氏の専用機を使って大量の象牙が密輸されたとの疑惑が波紋を呼んでいる。中国は、国際取引が規制されている象牙の最大消費地であり、アフリカ象の大量殺戮(さつりく)を引き起こしている“張本人”として環境団体などから批判を受けてきた。象牙密輸の取り締まりをアピールし、党高官の腐敗取り締まりを錦の御旗としてきた習政権だけに、疑惑が事実ならメンツは丸つぶれだ。両国政府が疑惑を強く否定する中、「胡錦濤前国家主席の腹心が習氏にぬれぎぬを着せるためにニセの情報を流した」との権力闘争じみた、きなくさい情報まで報じられた。

 数千キロを買い付け

 ロンドンに拠点を置く環境保護団体「環境調査エージェンシー(EIA)」は6日、タンザニアにおける象牙の密輸の現状などについてまとめた報告「バニシング・ポイント(消滅点)」を発表。報告によると2013年12月、中国海軍の艦艇がタンザニアの最大都市ダルエスサラームに寄港した際、象牙の取引が活発に行われ、ある取引業者は艦船の乗組員に5万ドル(約570万円)で売ったと証言した。また中国人の男が、海軍の士官に売却する300キロ超の象牙をトラックに積載して港に入ったところ逮捕された。

 最も衝撃的なのは、象牙が国家主席専用機で密輸されたとの証言だ。EIAの覆面調査員は14年9月、ダルエスサラームの象牙密売人2人と接触。密売人によると、13年3月に習主席率いる中国の政府高官や財界人の訪問団がタンザニアを公式訪問した際、現地で中国人が数千キロの象牙を買い付け、1キロあたりの卸値は通常の倍の700ドル(約8万円)まで高騰したという。象牙は外交用に使われる袋に入れられ、専用機で中国に持ち込まれたとされる。

 報告によれば、09年2月に胡前主席(71)がタンザニアを公式訪問した際にも象牙価格は高騰。06年には「中国大使館の館員が象牙の主な買い手」との証言を得たという。

 中国は最大の輸入国

 EIAによれば、「タンザニアは密猟で得られた象牙の最大の供給国であり、中国は最大の輸入国」。世界遺産に登録されているタンザニアのセルース猟獣保護区では4年間で象が67%減少したほか、タンザニアの象は13年の1年間だけで1万頭が殺されたという。また与党のタンザニア革命党の一部の政治家が、密猟者を保護しているとも指摘する。

 英BBCによると、中国で象牙の装飾品はステータスシンボルとして人気があり、薬の原料としても使われている。象牙を獲るために象が殺されていることを知らない中国人も多いという。また米紙インターナショナル・ニューヨーク・タイムズによれば、中国国内で象牙の価格は過去4年間で3倍に高騰。富裕層が増加を続け、象牙の需要は膨らむ一方だ。

 米AP通信によれば、中国は08年、ワシントン条約に基づき、象牙を使った伝統工芸品の職人を保護する名目で62トンの象牙を輸入。約200の工場や店が正規の販売免許を持っているが、こうした「正規の」象牙に密輸象牙がまぎれこみ、摘発を困難にしている。

 胡氏の側近がニセ情報?

 EIAの報告について中国外務省の洪磊(こう・らい)報道官(45)は6日、「報告には根拠がない」として「強烈な不満」を表明。しかし、この報告については国内のメディアではほとんど報道されず、厳しい情報統制が敷かれている。また英ロイター通信によると、タンザニアのバーナード・メンベ外相(61)は「わが国と、その友人である中国のイメージをきづ付けるための捏造だ」と非難した。

 そんな中で、米国に拠点を置く中国語ニュースサイト「博訊(ボシュン)」は10日、「北京の消息筋」の情報として、「海軍の艦艇や(中国共産党の最高幹部である)政治局常務委員、過去の中国指導者の専用機を利用して象牙の密輸が行われていたのは事実だ」と報道。一方で、習氏の公式訪問時に、過去の慣例にしたがって現地の商人らが象牙を買い付け現地価格が上昇したのは事実だが、「習主席の専用機には象牙は積みこまれなかった」としている。さらに、胡錦濤氏の腹心である令計画・元党中央書記処書記(58)を名指しして、令氏が過去、高官による象牙密輸を取り仕切っていたと断定。今回の報告も、令氏の仲間が「習氏に罪をなすりつけるため、海外メディアを利用してニセの情報を流させた」と主張している。

 象牙が実際に習氏の専用機に積み込まれたかどうかの真偽はさておき、中国がこれまで官民挙げて象牙の闇ビジネスに手を染めていたのは確かなようだ。

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