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抱きしめたくなるような3D映像 映画「天才スピヴェット」 ジャン=ピエール・ジュネ監督インタビュー

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抱きしめたくなるような3D映像 映画「天才スピヴェット」 ジャン=ピエール・ジュネ監督インタビュー

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ともに来日したスピヴェット役のカイル・キャトレット(手前)と戯れるジャン=ピエール・ジュネ監督=2014年10月19日、東京都港区のザ・リッツカールトン東京(大山実撮影)  世界中で大ヒットした「アメリ」(2001年)で知られるフランスのジャン=ピエール・ジュネ監督(61)が、新作「天才スピヴェット」で初めて3D映像に挑んだ。飛び抜けて明晰(めいせき)な頭脳を持つ孤独で早熟な主人公の少年科学者、スピヴェット役には、私生活でも文武両道に秀でた天才子役、カイル・キャトレット(10)を抜擢(ばってき)した。これまで手がけてきた作品群と同様、本作でもアウトサイダー的な生き方を歩まざるを得なくなった人間に温かいまなざしを向け、少年が新たな人生のステージへと踏み出すまでの苦悩を叙情詩として描いてみせた。

 原作はラルフ・ラーセンの冒険小説「T・S・スピヴェット君 傑作集」。米モンタナ州の牧場で暮らすスピヴェットは、スミソニアン学術協会から権威ある科学賞を贈られることになった。科学の才能を理解しようともしない家族や学校の教師に嫌気も差していて、黙って授賞式に出席することを決意。それは米大陸横断という壮大なスケールの家出となった。同居する両親(カラム・キース・レニー、ヘレナ・ボナム=カーター)と姉といえば、かつて不慮の事故で失った弟のことで虚無感にさいなまれ、スピヴェットへの関心などすっかり薄れてしまっていたのだ。受賞スピーチに臨んだスピヴェットは…。

 空間を漂うものを表現する

 カイルは「学校で科学の内容を勉強するのは大好きだけど、アウトサイダーなタイプではないですよ」と自己分析。スピヴェットについては「家族との会話が少ないし、家族といてもアウトサイダーだと思っているはずです」と同情を寄せた。一方、ジュネ監督は開口一番、大勢の日本人女性が「アメリ」に登場したパリのカフェを今でも熱心に訪れていることを驚きを持って指摘したうえで、「彼女たちはアメリやスピヴェットのような内向的気質を持っていて、きっとアウトサイダーに自分を投影しているのでしょう」と推し量った。また、アウトサイダーが楽に生きるには「僕のすべての作品を見てくれれば方法が分かるよ」とジョークを交えて答えた。

 かなり以前から3D映像に関心を持っていたというジュネ監督は、その魅力を「目の前に現れた美しい映像を見て、思わず抱きしめたくなるような気持ちにさせてくれること」と強調した。本作を3Dで描いたのは、2Dでは空間を漂うものを表現するのが難しく、映像に図表やキャプションがにぎやかに飛び交う本作では3Dが最適と判断したためだ。2Dで撮影した映像を後で3Dに変換するポピュラーな手法には「映像が粗悪で観客に負担を強いる」と否定的で、本作では撮影段階から3Dカメラを使ったそうだ。

 カイルは英語、ロシア語、スペイン語など6カ国語を話せるほか、武道家としても相当の腕前であることをジュネ監督にアピールし、3000人の候補者を押しのけて主演の座を射止めた。「僕はアクション映画にも出たいし、映画監督もやってみたい」。ダイヤモンドの原石を発掘したジュネ監督は元気いっぱいのカイルの活躍に目を細めていた。11月15日から全国順次公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:大山実/SANKEI EXPRESS

 ■Jean-Pierre Jeunet 1953年9月3日、フランス生まれ。マルク・キャロと共同で監督した91年「デリカテッセン」と95年「ロスト・チルドレン」で世界的に注目を集め、97年「エイリアン4」でハリウッドに進出。2001年「アメリ」で米アカデミー脚本賞にノミネート。このほか監督作は04年「ロング・エンゲージメント」、09年「ミックマック」など。

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