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根拠も効果も「?」米が対北制裁 サイバー攻撃報復で3組織10人対象

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根拠も効果も「?」米が対北制裁 サイバー攻撃報復で3組織10人対象

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朝鮮中央通信が配信した新年に首都平壌市内の赤ちゃんホームを視察する金正恩第1書記の様子。米国は、サイバー攻撃への報復として新たな制裁措置を発動したが、その効果を疑問視する声が多い=北朝鮮(ロイター)  米映画会社ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)へのサイバー攻撃をめぐり、バラク・オバマ米大統領(53)は2日、“犯人”と断定した北朝鮮に対し、初の報復措置を発動する大統領令に署名した。

 これを受け、米財務省は北朝鮮の諜報機関である偵察総局など3組織と政府高官ら10人を新たに経済制裁の対象に指定。米国内の金融資産を凍結し米国民との商取引を禁じた。ただ、制裁対象者がサイバー攻撃に関与したわけではなく、実行部隊は特定できておらず、根拠はあいまい。さらに対象者が米国内に資産を保有しているかどうかは不明といい、効果も疑問視されている。

 「軍事挑発抑止が狙い」

 制裁対象の3組織は偵察総局のほか、武器貿易や物資調達を担う「朝鮮鉱業貿易開発会社(KOMID)」と「朝鮮檀君貿易会社」。政府高官ら10人には両社の代表として中国、ロシア、イラン、シリア、ナミビアに駐在する人物らが含まれる。米国への入国を禁じるほか、米国内の金融機関へのアクセスや米国民との商取引も認めない。

 ジェイコブ・ルー米財務長官(59)は2日、「北朝鮮を孤立させ、10人近くの重要な工作員の活動を妨害するのが目的」と説明。「今後もこうした広範かつ強力な手段で北朝鮮の政府関係者や組織の活動を暴露し続ける」と強調した。

 だが、米政府高官は米メディアに対し、「制裁対象となった組織や個人がSPEへのサイバー攻撃に直接、関与しているとは考えられない。米国内に金融資産や銀行口座を保有しているかどうかも定かではない」と明言。その上で、「今回の制裁はサイバー攻撃への報復というより、武器ディーラーたちの氏名を公表して取引を抑制したり、米などから北朝鮮への金の流れを止めることで、北朝鮮の挑発的な軍事行動を抑止するのが狙いだ」と説明した。

 実行部隊特定できず

 オバマ大統領は昨年12月に、北朝鮮の金正恩第1書記暗殺を描いたコメディー映画「ザ・インタビュー」を製作したSPEへのサイバー攻撃を北朝鮮の犯行と断定。「相応の対応を取る」と報復を表明していた。ただ、その根拠はあいまいで、米国のサイバーセキュリティー専門家から「北朝鮮の犯行」を疑問視する意見が噴出している。

 サイバー攻撃には偵察総局の関与が指摘されていたが、今回の制裁発動では実行部隊を特定できていないことが改めて浮き彫りになった。専門家の中からは、最終的に大量破壊兵器の保有が誤りだったことが判明したイラク戦争の失敗になぞらえる声も出ている。

 一方、制裁の効果も怪しい。本来ならサイバー攻撃で報復したいところだが、北朝鮮ではインフラや金融システムがコンピューター化されておらず、反撃対象が見当たらないのが実情。オバマ大統領による報復表明後、北朝鮮でインターネットの接続が遮断され、米当局の関与が疑われたが、北朝鮮にはネット利用者がほとんどおらず、制裁の意味をなさない。米政府高官も改めて関与を否定した。

 北朝鮮が核開発などに使用しているコンピューターへの攻撃も検討されているもようだが、「外部とつながっていないクローズドシステムのため、ウイルスを送り込むのに時間がかかる」(ネットセキュリティー専門家)という。今回の報復は、「北朝鮮の出方を探る警告」の意味合いが強そうだ。(SANKEI EXPRESS

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