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読書苦手な人に届けたい 「本なんて読まなくたっていいのだけれど、」著者 幅允孝さん
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読書の日々をつづった幅允孝(はば・よしたか)さん。「本好きはもちろん、そうでない人にも手に取ってもらえたら」(藤田一浩さん撮影、提供写真)
『本なんて読まなくたっていいのだけれど、』。なんとも続きが気になるタイトルは、SANKEI EXPRESSで「本の話をしよう」を連載中のブックディレクター、幅允孝(はば・よしたか)さん(38)の新著だ。2012年から14年にかけて執筆したブックガイドやエッセーを大幅に改稿。ブックディレクターという職業の第一人者がつづった読書の日々には、本、そして人間への愛情が満ちている。
本なんて読まなくたっていいのだけれど…。帯文として続けられた言葉は「読んでみるのもいい。」。「どっちなんだ!と突っ込まれるんですが(笑)。もちろん、読んでほしいのですが、読書を強制したくはない。読書に関して、『堅苦しい』『つまらない』とほろ苦い記憶を持つ人にこそ、本を届けたい。そんな思いをタイトルに込めました」
SANKEI EXPRESSの連載でも一端を紹介してきたが、その活動は実に幅広い。病院やマンション、旅館にライブラリーを作ったり、百貨店を巻き込んで読書イベントを仕掛けたり。「思わぬ人に会えるのが楽しい。『こういう本だったら読んでもらえるかな?』と考えて。たとえば、文学に興味がなくても、食べ物だったら関心を持ってもらえるかもしれない。だったら、おやつのエッセー本を差し出してみよう、なんて…」
その作業を「結び目を探す」と表現する。「本というメディアは、いつブレークスルーに出会えるか分からないし、読むためには持久力や忍耐力が必要。ただでさえ携帯電話やゲーム、アニメとメディアが時間の奪い合いをしている中、本の面白さを伝えるのはすごく難しい。だからこそ、相手が両手を伸ばした範囲にあるものと本を、どう結びつけるかが大事になってくる」
本書では、批評家としてではなく、あくまでも紹介者として本を語る。「本って、読み方は自由。『ダンテの神曲はこう読まなきゃ!』なんてない。本の読み方の自由を奪いたくないんです。紹介者として僕がやるべきことは、一人の幅という人間が、この本を読んでどう心が駆動したか、その熱を伝えることだと思っています。熱が少しでも伝わって、『ちょっと読んでみようかな』と思ってもらえればうれしいです」
巻末に収録されたブックリストを見ても、純粋な好奇心が伝わってくる。ポテトサラダについて熱く語る『ポテサラ酒場』から、宅老所発の雑誌、サッカー史に名を残す名選手・イブラヒモビッチの自伝まで。まるでおもちゃ箱を開けたようなにぎやかさだ。「僕の頭の中がいかに雑多かバレてしまいますね(笑)。あまり普通のブックレビューでは紹介しないものを取り上げたくて」
リライトにあたっては、よりエッセーとしての性格を強めた。「『自分』をより入れるようにしました。本が苦手な人は、『読書はかしこまってするもの』というイメージを持っているけど、『読書は日々飲んだり食べたりすることとそんなに離れていないんだ』ということを伝えられれば」。本が好きでも、そうでなくても。本はいつもそこにある。(文:塩塚夢/撮影:フォトグラファー 藤田一浩/SANKEI EXPRESS)
「本なんて読まなくたっていいのだけれど、」(幅允孝著/晶文社、1600円+税)