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「日本の技」「日本のカッコいい」を売っていく 「クールジャパンとは何か?」著者 太田伸之さん

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「日本の技」「日本のカッコいい」を売っていく 「クールジャパンとは何か?」著者 太田伸之さん

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「こういう国になってほしいという思いを込めた」と話す、著者の太田伸之さん=2015年1月8日、東京都港区(塩塚夢撮影)  【本の話をしよう】

 最近、「クールジャパン」という言葉に象徴されるように、日本の独自の文化が海外で高く評価されつつある。クールジャパン関連の投資を担う官民ファンド「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)」代表取締役社長の太田伸之さん(61)が新書『クールジャパンとは何か?』を刊行し、世界で稼げる日本になるためのヒントを示した。

 安売りするな

 クールジャパン機構とは、日本の魅力ある商品・サービスの海外需要開拓に関連する支援・促進を目指し、中長期的な視野で投資を行っていく機関で、2013年に発足。太田さんは百貨店「松屋」の執行役員や日本を代表するファッションブランド「イッセイミヤケ」の社長などを経て現職に就任した。

 著書では、アメリカでのジャーナリスト経験も持ち、長年国内外のファッション業界で活躍してきた太田さんならではの視野で、「クールとは何か」から、「なぜ日本の海外戦略は失敗してきたのか」、さらに「世界で稼げる強い日本」となるための提言までを、小気味よいトーンで論じている。

 「バブルがはじけて20年。効率を追求し、低価格志向を強めていく中、本来の日本のよさが失われてしまった。もはや『安くて』『壊れにくい』だけでは海外ではモノは売れない。われわれが売っていくべきものは『日本の技』『日本のカッコいい』だと思っています」

 日本のよさとは、「和を大事にするところ。相手を思いやる気持ちが、使う人のことを考えた道具だったり、素晴らしいサービスを生み出す」。しかし、逆にその奥ゆかしさが、かえって自分たちの価値を下げていると指摘する。

 「いいものなのに、外国の人から『高すぎる』と言われると、すぐに値段を下げてしまう。ペリーが黒船で浦賀にやってきたころと何も変わっていない。エルメスなど高級ブランドは絶対に安売りしません。『うちは品質に自信があるからこの値段でやるんだ』と堂々とやればいいのです」

 地方経営者へエール

 とはいえ、ただいいものを持っていくだけでは売れない。そのための戦略を、例えば、大人気の日本酒「獺祭(だっさい)」など、具体的な例をあげながら提示。成功例だけでなく、失敗例も遠慮なく指摘するが、根底にあるのは日本への愛だ。「ニューヨークに長く住んでいたという経験が大きいですね。いい国なのに、日本はなんでこんなにニュースにならないんだ、という悔しさ。今回の本はビジネス的な視点ですが、政治も文化も、『こういう国になってほしい』という思いを込めました」

 本書には、地方でがんばる経営者たちへのエールも詰まっている。「獺祭もそうですが、今や東京進出という段階を踏まなくても、いきなり世界で成功できる。国内の市場が限られている中、自分たちの地域だけで商売していては、子供たちに継がせられる未来にはならない。地方で悶々としている経営者たちに、『いっちょ、世界でやってみるか!』と元気になってもらえればうれしいですね」(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■おおた・のぶゆき 1953年、三重県生まれ。明治大学卒業後、フリージャーナリストとして渡米。85年、東京ファッションデザイナー協議会(CFD)を設立。95年、松屋営業本部顧問兼東京生活研究所専務取締役所長に就任。2000年、イッセイミヤケ代表取締役社長に就任。11年、松屋常務執行役員MD戦略室長に就任。13年から海外需要開拓支援機構代表取締役社長。

「クールジャパンとは何か?」(太田伸之著/ディスカヴァー携書、1000円+税)

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