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モスル奪還へ4月にも地上戦 「イスラム国」殲滅作戦 米部隊派遣も

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モスル奪還へ4月にも地上戦 「イスラム国」殲滅作戦 米部隊派遣も

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山岳地帯から、イスラム国が支配するイラク北部モスル近郊の村を見下ろすクルド人部隊の兵士。モスル奪還に向けた本格的な地上戦が、始まろうとしている=2014年12月1日(ロイター)  イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」と戦う米軍主導の有志連合は空爆の頻度と強度を高め、7日もイラク北部モスルとシリア北部ラッカでそれぞれ十数回の空爆を実施した。ただ、空爆だけではイスラム国を「歴史のかなたに葬り去る(殲滅(せんめつ)させる)」(バラク・オバマ米大統領)のは不可能で、限界がある。米軍の出方が注目されているが、中東全域をカバーする米中央軍の当局者は米CNNに、モスルの奪還を目指してイラク軍地上部隊の作戦が4月にも開始されるとの見通しを示すとともに、イラク軍を手助けする形で米地上部隊の派遣もあり得ると明言した。

 UAE、再び空爆参加

 イスラム国に対しては、もはや力でこれをたたきつぶすしかないという認識で有志連合は一致している。そして、当面の軍事的な焦点はイラク北部の最大都市モスルの奪還だ。次期米国防長官に指名されたアシュトン・カーター氏(60)も4日の議会公聴会で、「住民らをイスラム国の野蛮なルールに慣れさせてはいけない。イラク治安部隊の準備が整い次第、イスラム国への反撃を始めるべきだ」と訴えた。

 オバマ大統領のイスラム国殲滅に向けた戦略の第一歩は、イスラム国の勢力をシリア領内に封じ込めることであり、モスル奪還の成否は戦略の試金石となる。また、このところ、イスラム国との戦況は有志連合側の優勢が伝えられる。1月下旬、シリア北部アインアルアラブ(クルド名コバニ)の攻防では、有志連合の空爆支援を受けた現地の地上部隊が町全域をほぼ奪還。イスラム国は油田都市キルクークを攻撃して反攻に出たが、撃退された。

 有志連合の空爆と、現状ではイスラム国との地上戦闘をほぼ一手で担っているクルド人部隊(ペシュメルガ)の奮闘が奏功している形だ。空爆への参加を中断していたアラブ首長国連邦(UAE)も7日、国営首長国通信を通じ、F16戦闘機の飛行部隊をヨルダンに派遣すると発表。有志連合側は勢いを得ている。

 蛮行報道で風向きに変化

 しかし、モスル奪還には課題も多く、実現は容易ではない。約145万人が住む大都市だけに攻略には「市街戦が想定される」(米当局者)。空爆支援にも限界がある。また、クルド人部隊には自分たちの居住領域の防衛が最優先であり、有志連合が目指す「イスラム国殲滅」に向けて進軍を続けるのは難しい。モスルをめぐる地上戦の主力はイラク軍が担わざるを得ないが、クルド人部隊に比べると士気が格段に低いのが現状だ。

 モスル奪還には米地上戦闘部隊の参戦が不可欠だが、オバマ氏は派遣に慎重だ。チャック・ヘーゲル国防長官(68)の更迭が決まったのも、地上軍派遣をめぐって大統領と意見が対立したためとされており、米軍や国防総省幹部の発言もオブラートに包まれたように控えめである。ただ、イスラム国の蛮行が再三再四伝えられるにつけて、徐々に風向きが変わっている。

 中央軍のロイド・オースティン司令官(61)と米軍制服組トップのマーチン・デンプシー統合参謀本部議長(62)は最近、攻撃の標的特定でイラク軍を手助けする少人数の米軍兵士が現場で必要になるケースも想定しうるとの見方を示している。中央軍の当局者はCNNに「当面、米軍はイスラム国によるモスルの防御態勢に関する情報収集に努めているが、防御の堅さによっては、イラク軍に随行させる米地上部隊の派遣を政府に提言する」と話している。流れは米地上部隊参戦不可避になってきている。(SANKEI EXPRESS

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