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人間としての成長や変化を描く ドキュメンタリー「ディオールと私」 フレデリック・チェン監督に聞く
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「最初からドキュメンタリーでデザイナーの人生を撮りたいと考えていた」と語るフレデリック・チェン監督=2014年12月5日(アルシネテラン提供) 世界の女性たちが憧れるフランスの高級ブランド「クリスチャン・ディオール」。1947年に創立者、クリスチャン・ディオール(1905~57年)が初めてコレクションを発表後、65年の歳月を経た2012年、ベルギー出身のラフ・シモンズ(47)が主任デザイナーに抜擢(ばってき)された。フランスの映画監督、フレデリック・チェン(36)は、オートクチュール(高級注文服)の経験がないシモンズがどんな仕事ぶりを見せるのかに興味を抱き、彼に密着したのが新作ドキュメンタリー「ディオールと私」だ。
「シモンズの前任、ジョン・ガリアーノをはじめ、クリスチャン・ディオールのファッションデザイナーたちは大勢の人が思わず目を奪われる美しいデザインを披露してきました。でも、シモンズの場合、そういう典型的なイメージがありませんでした。私は彼のそんな部分を探ってみたいと思ったわけです」
パリ・コレクションまで残された時間はわずか8週間。シモンズは強烈なプレッシャーを受けながらも、54体のオートクチュールを完成させるため、105人の「お針子さん」たちと大胆かつ緻密な戦いに挑む。
SANKEI EXPRESSの電話取材に応じたチェン監督は「シモンズがきっと成功するという確信はまるで持てませんでした。僕はもう完全にチームの一員になってしまったような気持ちだったから『どうしよう、どうしよう』と一緒に慌てていましたね」と明かした。ただ、最大の関心は成功の可否ではなく、シモンズの感情の旅路にあり、人間としての成長や変化を描くことが一番重要だった。
チェン監督がオートクチュールに興味を抱いたのは、ファッション分野の中でもっとも夢のあるエリアだと感じたからだ。「実際にこの目で見ないとまるで分からない世界で、クリエーティブな才能たちがいろんな形で花開いています。見ていて刺激的です。また、伝統とモダンという価値観のせめぎ合いがあり、その上でオートクチュールは現代にしっかりと息づいています。映画の作り手にとって、それは魅力的なことですね」
作中、シモンズとお針子さんたち-新旧の価値観を持つスペシャリスト同士が話し合いを重ね、クリエーティブな関係を深めていく様子が丁寧に映し出されたのはそのためだ。「クリスチャン・ディオールは、新しいデザイナーを受け入れながらも、伝統を維持し、ブランドをずっと生き続けさせてきた。これがやはり愛されている理由だと思います」
東京・Bunkamuraル・シネマほかで公開中。(高橋天地(たかくに)/SANKEI EXPRESS)
※映画紹介写真にアプリ